【特集】第30回伊平屋ムーンライトマラソン


【特集】第30回伊平屋ムーンライトマラソン 合図で一斉に走りだすフルマラソンコースのランナー=19日午後3時、伊平屋村我喜屋の友愛と健康の広場(喜瀨守昭撮影)
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節目の大会 島に熱気 第30回伊平屋ムーンライトマラソン 19日、907人エントリー

 「星の声援、月の伴走」をキャッチフレーズに第30回伊平屋ムーンライトマラソン(主催・同実行委員会、共催・琉球新報社)が19日、伊平屋村の友愛と健康の広場を発着点に開かれる。節目となる今大会にはフルマラソン(42・195キロ)に230人(男性157人、女性73人)、ハーフマラソンに677人(男性394人、女性283人)の合計907人がエントリーした。大会開催を前に、熱気高まる伊平屋島や大会の魅力を紹介する。(玉寄光太、池田哲平)

 伊平屋ムーンライトマラソンの最大の特徴は、月夜のランニングだ。ランナーは美しい海岸線や田園風景を楽しんだ後に、青い海の色が夕日で赤く染まるグラデーションなど、時間とともに変わる景色を堪能することができる。日が暮れると東海岸から昇る満月の光と、ペンライトの明かりを頼りにゴールを目指す。海沿いの道路を使用する全体的に平らなコースで、初心者や女性も気軽に参加できるとして、県内外にファンも多い。

 大会前日の18日午後7時からの前夜祭には、民謡歌手の仲宗根創が別名義で活動する「R∞2(ルーツ)」と、Yona Yuu、PLATYがフィーチャリングして楽曲を披露。元「やなわらばー」の石垣優、70~90年代のヒットロックを演奏するクアッドロックバンドが出演する。19日午後10時からの後夜祭は、かりゆし58によるライブが楽しめる。前夜祭は「いへやそば」、後夜祭は牛汁や泡盛「照島」を使ったカクテルが振る舞われる。

 今帰仁村運天港と伊平屋を結ぶフェリーは約80分。19~20日の乗船は要予約。大会当日の19日は時間を変更して運航、翌20日は伊平屋発の便を増便する。問い合わせは同実行委員会、電話0980(46)2867。

コース彩る名所の数々

 (1)念頭平松(ねんとうひらまつ) 国指定天然記念物で、日傘を張ったように枝が広がる美しい松の木で、約280年前に植えられたと伝わる。周辺一帯が公園として整備され、村民のオアシスとなっている。

 (2)ヤヘ岩 海岸から50メートルほど沖合いにそびえる岩山で、太古築城の跡がある。干潮時には、海岸から歩いて渡ることができ、釣りやダイビングの絶好のポイント。

 (3)久葉山 県内でも現在では珍しい、クバで覆われた山で、県指定天然記念物。白い砂浜と、エメラルドグリーンの海、美しい緑のクバを楽しめる絶景スポット。

 (4)クマヤ洞窟 全国にある「天の岩戸伝説」の最南端で、県指定天然記念物。歴史・民俗ファンからも人気の観光スポットとなっている。

 (5)野甫(のほ)大橋 伊平屋島と野甫島を結ぶ、全長320メートルの橋。野甫大橋の両サイドは、絶好の釣りスポットとして知られる。夕焼けや夜景も美しいとして、知られている。

 (6)神アシャギ 祭祀(さいし)の日に神々が祝女(ノロ)に乗り移り、降臨する場所。伊平屋島では、かやぶきのものが我喜屋と島尻に残っている。

特産品も多彩に

 伊平屋島には、おもてなしを大切にする島民の心を意味する「いへやじゅうてー」という言葉がある。ムーンライトマラソンも島民総出で出場者を出迎えようと、準備を急ピッチで進めている。

 島北部のパワースポット「クマヤ洞窟」や国指定天然記念物「伊平屋島の念頭平松(ねんとうひらまつ)」など、幹線道路沿いには「伊平屋七景」と飛ばれる“インスタ映え”のスポットが点在。他にもコバルトブルーの海がまぶしい米崎海岸など、各地の名所は参加者を楽しませる。

 海に囲まれ、近海で採れた海産物の加工品など、お土産も思い出を彩る。太陽熱のみでじっくり凝縮され、こくのある味わいが特徴の「手もみ完全天日塩塩夢寿美(えんむすび)」や、村漁協の「もずくめん」は県内外にファンが多い。経産肥育牛の「伊平屋てるしの牛」を使った「てるしの牛カレー」や、村漁協で陸上養殖されている鮮度抜群のミーバイを桜チップで燻煙(くんえん)、低温熟成させた「ミーバイ生ハム」も新たな特産品として人気だ。

てるしの牛カレー(提供)
ミーバイ生ハム(提供)

 黒糖を使ったケーキやアガラサーなどのお菓子も製造されている。伊平屋酒造所の照島や、島でつくられた米を使った「しまぐみ」などの泡盛も、香り豊かな味わいで知られている。

今年も記念ボトル

 大会参加者が楽しみにしているお土産の一つが大会記念ボトルだ。月夜をイメージした瑠璃色の瓶に、大会ポスターの図柄が取り入れられている=写真(提供)。島唯一の泡盛蒸留所、伊平屋酒造所の泡盛「照島」が詰められており、記念ボトルを集めるコレクターも多い。大会会場やフェリー売り場などで販売を予定している。度数は30度で、720ミリリットルで、2500円。

大会翌日に物産展

 大会翌日の20日午前8時~午後1時には、伊平屋の特産品や加工品など島の恵みがそろう物産展「イヘヤマルシェ」(同実行委員会主催)が前泊港ターミナル付近で開催される。9店舗が出店予定で、もずくめん、伊平屋島で採れた貝とウニを塩漬けした珍味「ナーガラス」など定番商品のほか、「てるしの牛カレー」、黒砂糖たっぷりの「クルーザーターパイ」や「伊平屋島の黒糖まみれ かりんとう」など、新商品も登場する。

交流深め、楽しい時間を
名嘉律夫・伊平屋村長

 大会が30年目を迎えたことは非常に感慨深いです。ひとえに村民や郷友会、企業の皆さんがムーンライトマラソンに強い思いがあったからです。

 本大会はスタート後、田名の田園風景の中を走り、西海岸側に出る頃には夕日が辺りを照らします。1人で走ると孤独なところもありますが、海の音や星の光が見守ってくれます。最後に東側のコースに入ってくると月が迎えてくれる。大会のテーマでもあります「星の声援、月の伴走」を背に楽しんでほしいです。

 村民も沿道に出て、太鼓や三線を打ち鳴らしてランナーの皆さんを元気づけたいと思います。

 ムーンライトマラソンは後夜祭の盛り上がりも魅力です。伊平屋そばや牛汁が振る舞われ、島の泡盛をシークヮーサーやレモンで割った「照島パンチ」が飲み放題です。会場で友人をつくるランナーさんもいるほど楽しさにあふれています。このために参加する人もいるようです。

 年々参加者も増えており、県内外から多くの方が大会に参加し盛り上げてくれています。北は北海道から南は与那国、そして台湾からもランナーが来島する。この大会が、世界的にも有名になった証拠ではないでしょうか。

 私は8回目の大会から運営に携わっています。当時は手作り感満載でした。当時、建設業で働いていたこともあり、コース全体のライト設置やテントの設営、草刈りなどをしました。台風の後の大会だと、沿道に砂が上がって片付けが大変でした。本大会も、村民一丸となって準備してまいりました。

 伊平屋ムーンライトマラソンを一度走った人たちは、印象に残る大会だったと感じてくださいます。ランナーの皆さんは地元に帰ると、村民のおもてなしの心や島の良さを発信してくれる。そして、再び観光でも来島してくださる。島の魅力が広まっていくことに大会の意義はあるように思います。

 せっかく島に来てくださるので、ランナーの皆さんが完走できるよう願っています。星と月に照らされてゴールし、後夜祭まで楽しみ、ぜひとも楽しいひとときを過ごしましょう。

 今大会を支えてくださる村民をはじめ、関係機関、各種団体および協賛企業、そしてボランティアの皆さまに対し、心より深く感謝とお礼を申し上げあいさつといたします。