沖縄でカイコ(蚕)を一から育ててバイオ研究をされている会社さんが、アップサイクルとして繭(まゆ)成分を配合した石けん(せっけん)を販売しています。使ってみたら肌がしっとりして感動! なぜ、繭成分が肌にいいんでしょうか?
(宜野湾市 クラシノ)
カイコが幼虫から蛹(さなぎ)になる時、糸を吐き出し、体を繭で覆っていきます。その糸が、独特のなめらかな質感と光沢を持つシルクであることはご承知の通りです。
しかし、石けんとは?
バイオ研究の副産物
調査員はさっそく製造元の株式会社OPPLを訪れました。
「弊社はもともと、感染症の研究開発を行う会社なんです」と社長の祝嶺陽子さん。感染症の診断薬になる原料を作る事業を柱としているのだとか。へ~。
聞けば、診断薬の原料には特定のタンパク質が必要で、そのタンパク質を作り出すのにカイコが一役買っているそう。
「カイコの繭は主にタンパク質です。1日で作るタンパク質が大腸菌より多いといわれているんですよ」とカイコ事業部部長・医学博士の児玉晃さん。
「カイコの卵に、作りたいタンパク質の遺伝子を細い針で入れて育てます。特殊な遺伝子を持ったカイコは、糸を作る絹糸腺に目的のタンパク質を発現するという仕組みです」と研究開発部長・医学博士の仲嶺三代美さんが続けます。え~、すごい! そんなことが可能とは!!
保湿効果を活用
さらに話を聞いていくと―。研究の過程で、遺伝子組換えを行ったカイコと行っていないカイコとかけ合わせる必要があるのだそう。
「組換えを行っていないカイコの繭はこれまで破棄していたのですが、再利用できないかということで、石けんにチャレンジしました」(祝嶺社長)
ここで、なぜ石けん? という疑問の答えが説明されました。ポイントは、カイコの繭に含まれる「セリシン」というタンパク質。
「セリシンは、繭の粘着質の部分に含まれますが、蛹を守るために、保湿効果・保護効果があることが分かっていて、それを独自の方法で抽出し、石けんに混ぜ込んでいます」(児玉さん)
タンパク質を配合、というのはそういうことだったのですね。納得です!
そうやって誕生したのが「シルクさふんOKINAWA」。すべて無添加で環境にやさしいのが特徴。色やデザインに運勢や花言葉を用いたシリーズもあり、ラインアップも豊富です。商品のデザインから製造まで、全てバイオ研究が専門の社内スタッフが手掛けているというから驚き。
商品名の「さふん」とは、方言で石けん。原料に島桑やクチャを用いたり、花ブロックのデザインをあしらったりしているのも、県民にはうれしいところ。
4月の発売後、口コミでじわじわと評判が広がっているそうですが、特に注目を集めているのが、犬用の石けん。肌が弱いペットにもやさしく、飼い主の手も荒れないと好評です。
空港やホテル、観光施設内のショップで販売しており、ECサイトも利用できます。「温暖な沖縄は、一年中カイコを育てられるのも強み」と児玉さん。今後の広がりに期待です。
問い合わせTEL 070―4370―3887
Instagram @silk_safun_okinawa
(2024年10月24日 週刊レキオ掲載)