今年4月に豊見城中央病院(新垣晃院長)が内閣府の認定を受けた「国家戦略特別区域高度医療提供事業」のうち、小児に対する軽度三角頭蓋の頭蓋形成手術について、医療関係団体が「自閉症に似た症状と三角頭蓋の関連について、科学的証明はなされていない」として声明文を出し、内閣府に対し認定撤回を求めていることが分かった。同病院はまだ実施していないが「基本的には予定通り進める方向で考えているが、声明文についてはきちんと受け止める」とし、疑問への回答で理解を求めていく考えを示している。
認定撤回を求める主な動きとしては、日本児童青年精神医学会(松本英夫理事長)が7月にホームページ上で声明文を発表し、日本自閉症協会(市川宏伸会長)も8月に同声明文を支持する見解を表明している。
内閣府地方創生推進事務局の担当者は「県と病院が検討中との報告を受けている」とし、推移を見守る姿勢を示した。県企画部企画調整課の担当者は「病院の意向を大事にしたい」と述べるにとどめた。
三角頭蓋(前頭縫合早期癒合症)とは、子どもの頭蓋骨の接合部分が早期に閉じる病気の一つ。多動や発達の遅滞、自傷行為など自閉症に似た臨床症状との関連性に着目した県内医師が頭蓋形成手術による症状改善を主張し、国や県の事業認定を受けた臨床研究を進めてきた。
同医師のデータによると2015年12月現在の手術数は541例で、13年までの491例のうち「改善した」が249例(51%)、「やや改善した」が218人(44%)だった。一方で同医学会は軽度三角頭蓋と「発達の遅れと自閉症類似の症状」の関連について「軽度三角頭蓋の自然経過を含めた疫学調査が行われておらず、科学的医学的証明はなされておらず、非倫理的な医療行為」などと指摘し、認定撤回を求めている。
同病院が取り組むのは、再生医療など先進技術による医療ツーリズム事業を展開する高度医療提供事業。病床規制に係る医療法の特例として、再生医療と軽度三角頭蓋の頭蓋形成手術、ホウ素中性子捕捉療法によるがん治療―の3分野で先進的医療を提供するため、病床を18床増やすことができる。