元日本兵・故日比野勝廣さん手記 自費出版、5版到達


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「今なお、屍とともに生きる」の書籍を手にする清水糸子さん(左)と孫の三浦千鶴さん=9月24日、南城市の南部観光総合案内センター

 【南城】沖縄戦当時、南城市玉城糸数の「糸数壕(アブチラガマ)」で約3カ月過ごし、九死に一生を得た故・日比野勝廣さんの手記を娘たちがまとめた書籍「今なお、屍(しかばね)とともに生きる―沖縄戦嘉数高地から糸数アブチラガマへ」が、自費出版としては異例の5版に達している。日比野さんの次女の清水糸子さん(66)=愛知県=は「沖縄戦を語り継ぐ上で、この本が少しでも何かの役に立てば父も喜ぶと思う」と話している。

 日比野さんは日本軍の兵隊として沖縄戦に参加した。浦添で起きた戦闘で負傷して破傷風にかかったが、糸数壕で地域住民に助けられて生還した。戦後、100回以上沖縄を訪問し、2009年に亡くなるまで沖縄通いを続けた。書籍は日比野さんの沖縄戦体験や娘たちの思いをまとめたもので、08年に出版し、15年9月に5版を発行した。

 清水さんは9月24日、娘・息子夫婦や孫と糸数壕を訪れ、日比野さんの足跡をたどった。清水さんは「初出版から8年たった今も、父の本を多くの方々に読んでいただいていることに感謝したい。父は亡くなるまで沖縄戦のことを語り続けていた。亡くなって初めて父の戦争が終わったと感じた」と思いを語った。

 書籍は糸数壕を管理している南城市の南部観光総合案内センターで購入できる。問い合わせは同センター(電話)098(852)6608。