深層水仕込み泡盛完成 産業まつりで試験販売へ


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海洋深層水を使った泡盛を発表する瑞泉酒造と県工業技術センター、県海洋深層水研究所の関係者=5日、県庁記者会見室

 瑞泉酒造(那覇市、佐久本学社長)は5日、泡盛の製造過程で海洋深層水を使った新製品の開発を発表した。大正時代に書かれた泡盛の調査文書に「浸米に使用する水は井水、あるいは井水に少量の海水を加えて用いる」とあるのにヒントを得て、2010年の研究開始から6年をかけて商品化に至った。深層水をもろみの仕込みに使うことで、デンプンを糖に変える速度やアルコールの生成速度が速まるなど、発酵への効果が確認された。

 来年1月4日に発売するのに先立ち、第40回沖縄の産業まつり(21~23日)で試験販売する。会場ではボトルデザインや商品名の募集もする予定だ。

 開発のきっかけは製造部の伊藝壱明さんが、1924年に出版された調査書「琉球泡盛に就いて」(田中愛穂著)の中で泡盛製造に海水を使っていた記述を見つけたことだった。伊藝さんは「海水が使われていたことに驚き、どのような味になるのか素朴な疑問が湧いた」と振り返る。

 県工業技術センターや県海洋深層水研究所と共に研究した結果、深層水を混ぜる量が50%を超すと発酵に問題が起きるが、6~25%の範囲ではフルーティーな香りと、甘く濃醇(のうじゅん)な味に仕上がり、発酵にいい効果を与えることを確認した。

 もろみの段階で塩分を含む深層水を混ぜるが、その後の蒸留工程で塩分は取り除かれるため、完成品に塩分は残らない。
 
 瑞泉酒造によると、脱塩した海洋深層水を割り水に使った泡盛は他社から販売された例があるが、仕込みの段階で海洋深層水を活用するのは「近年ではない」という。

 佐久本社長は「海洋深層水仕込みの表現についても国税庁と調整を終え、ようやく商品化する。沖縄のイメージにもマッチしており、観光客に県産品をPRできる商品になってほしい」と期待を込めた。

 商品は720ミリリットルで、値段は1400円(税別)を予定している。