【島人の目】日本人俳優との出会い


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 5月下旬、ロサンゼルスの隣接都市ガーデナ市のチャイニーズレストランで、南カリフォルニア奄美会の昼食会が開催された。ゲストとして出席した俳優の鈴木一真さん家族との出会いがとても印象深く残っているので、紹介したい。

 文化庁の新進芸術家海外研修制度で、ロサンゼルスに滞在してちょうど1年を迎えた鈴木さんは、16歳の時にモデルとしてスタートを切った。25歳で俳優として日本の映画界、ドラマ界、演劇界の第一線で活躍を続けている。トップモデルから実力俳優へと転身を遂げた。

 生まれは静岡。富士山が常に見守ってくれるような最高な環境で成長したと思えるのだが、物心ついたころから「とにかく刺激の足りない田舎生活から抜け出したい」と思っていたという。高校生の時、テレビ番組で原宿でモデルを募集しているのを知り応募、採用され上京した。

 モデル業を続けて6年、22歳の時に転機が訪れた。日本人で初めてイタリアのブランド「ベネトン」の世界キャンペーンに起用され、ニューヨークやパリでかなりの有名人となった。同時に俳優としての仕事のオファーが舞い込んだ。

 1998年4月から放送されたNHKの連続ドラマ「天うらら」で、ヒロインの相手役を演じるチャンスに恵まれた。俳優というのは人に喜んでもらえる仕事と実感し、それを機会にモデルから俳優業に専念した。

 2000年に蜷川幸雄さん演出のシェイクスピア作品、テンペストに出演。俳優としての第二の転機となり、俳優としてやっていける自信がついたのは30代半ばだった。最近は脇役が多くなったが「仕事にありつけることに感謝している」と語る。

 「日本の若者へ海外で新しいことにチャレンジする醍醐味(だいごみ)を伝え、若い人への刺激になりたい」と文化庁の海外研修制度に参加した理由を語る。日本人俳優としてハリウッドで実体験したことを表現することで「新たなことに挑戦する楽しさを伝えたいと思う」と意義付けた。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)