緊張と喜び。会場でひときわ目を引く選手らがいた。発足半年の宮古高体操同好会の1年生3選手がそう。22、23の両日、県総合運動公園体育館で開かれた県高校新人体育大会の体操競技男子団体に出場した。同校の出場は43年ぶり。本番で初めて本物の「ゆか」や「つり輪」に触れた。そして他の選手の躍動感ある演技も目の当たりにした。“体操愛”から会立ち上げに尽力した山﨑太陽は「試合はきついが応援してくれる声がうれしかった。もっときれいな演技がしたい」と仲間との成長を誓った。
中1でバク宙やバク転などのアクロバット動画を見て、また体操選手の内村航平や萱和麿にも憧れ、独学で体操を始めたのが山﨑だ。「場所は限られているので砂浜や重ねたマットでバク宙などを練習した」。同世代はダンス派も多いが、「ダンスじゃない、体操がいい。格好つけてないし、ミスは許されない」と表情はりりしい。
この春、宮古高に進み、宮古総実の体操部を指導する伊佐義史教諭を訪ね、教えを求めた。その後、学校側から同好会発足の許可を得て、具志堅忠教諭を顧問に迎え、西里響と与那覇勇樹が集まった。普段の練習を指導する伊佐教諭は、ラートの世界選手権出場経験者でもある。「この半年で第一目標とする多様な技のレベルが上がった」と語る。
新人大会では6種目の試技に挑んだ。体育館の白いマットや小型の跳躍器具で練習してきた「ゆか」の実物は弾力が強過ぎ、ダンス部員でもある與那嶺は「予選でけがをしてしまった」と苦笑する。体操が必修科目だったという43年前は各校に器具があったそうだが、もうその設備はない。同好会はロープで「つり輪」、跳び箱で「あん馬」など、身近な物で代用し練習する。
「ゆか」はともかく、初めての「跳馬」や「あん馬」などはまだ完全な演技には至らない。西里は「感覚をつかむのが大変だった」と語る。興南から1人で体操に出場し個人を制した鳩間裕一朗の技や、隣で華麗に演技する新体操の選手を間近に、大いに刺激を受けた3選手。団体出場が1校しかないため、初優勝のおまけもついた。
3人にとっての初の晴れ舞台は貴重な思い出になった。今後に向け、山﨑は「もっと練習して、部員も増やしたい」と体操への情熱をますますかき立てる。(石井恭子)