ナチス・ドイツによるホロコースト(大量虐殺)の歴史をたどる展示「勇気の証言-ホロコースト展 アンネ・フランクと杉原千畝(ちうね)の選択」(同実行委員会主催)の開幕式典が22日、浦添市民体育館で開かれた。式典で実行委員長の馬場善久創価大学長は、紛争やテロ、ヘイトスピーチなどの差別や暴力の世界が続く現代社会に、歴史から学ぶべき「全ての人の命と人権の尊重」を訴えた。27日まで。入場無料。
展示会では生存者の言葉や写真のパネルのほか、ドイツの迫害から「命のビザ」で多くのユダヤ人を救った外交官・杉原千畝の手記、収容所で使われた毒ガスの容器などが展示されている。
また「アンネの日記」で知られるアンネ・フランクに関する展示をする米国サイモン・ウィーゼンタール・センター「寛容の博物館」の展示物なども公開されている。
昨年10月から全国で巡回している展示会で、沖縄は6カ所目。ヒトラーの30歳の頃の書簡(複製)は、今回の巡回展が日本初公開。杉原千畝が、外務省の命令に背くことへの葛藤をつづった手記(複製)も展示されている。
サイモン・ウィーゼンタール・センターのエーブラハム・クーパー副所長は、沖縄戦やホロコーストを振り返り「全ての人が自分の行動に責任を持ち、批判的思考で、道徳的視点を忘れないことが大切だ」と語った。
馬場学長は「展示がさまざまな差異を乗り越え、互いを受け入れ理解する一助になれば」と開幕式であいさつした。
丁寧に展示に目を通していた橋口信行さん(57)=西原町=は「人間に対する尊厳と、相手への思いやりを失うことが平和の崩壊だと感じた」と語った。
仲里怜華さん(33)=那覇市=は「学校で勉強して知っていたことだが、改めて見ると、知らなかったことも多かった」と真剣な表情を見せた。「実際の戦争体験者は、どんどんいなくなっているが、展示会に参加することも、継承することの一つだと思う。興味のない子どもにも、大人が機会があるたびに話すことが大切だ」と語った。