平和の心、次世代へ クーパー氏に聞く 記憶継承、沖縄に希望


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「勇気の証言-ホロコースト展 アンネ・フランクと杉原千畝の選択」が22日、浦添市民体育館で始まった。戦後71年の沖縄で開催する意義を、米国のサイモン・ウィーゼンタール・センターのエーブラハム・クーパー副所長(66)に聞いた。

「若者に歴史を伝えていくことが大切だ」とインタビューで答えるエーブラハム・クーパー氏=22日、浦添市民体育館

-初来県で、ひめゆり平和祈念資料館を訪ねた。

 「学徒の顔写真が並んでいる場所で、写真がなく名前だけの女子学生が2人いた。資料館の島袋淑子館長の語りで空白を埋めて記憶が伝わってきた。戦争は犠牲者の統計だけではなく、文字や数字にできない人間の感情や体験が見えるような継承が必要だと思う」

-ホロコースト展の沖縄開催の意義は何か。

「過去を見つめ、現状を認識し、未来への警鐘を鳴らすことだ。大量虐殺などの反人道的な出来事は、今日の世界でも起きている。ISなどのテロリストは『自分たちも虐げられてきた』とし、暴力を振るう。センター名の由来となった、ナチスの犯罪者を告発し続けたサイモン・ウィーゼンタール氏は、戦争で89人の親戚を亡くしたが、テロリストのように憎しみに走らなかった。沖縄もまた住民を巻き込んだ過酷な戦争を体験したが、憎しみではなく平和の心を持っている。私は沖縄で記憶する大切さと人間らしさの希望を感じている」

-戦後71年がたった今、記憶の継承には何が必要か。

 「ユダヤの社会では、口承での継承が伝統的だが、現代は違う。あらゆる技術を使った継承の方法がある。証言者の声や映像をインターネットなどのメディアで記録できるようにすることが大切だ」

-日本のアイドルグループの、ナチスの制服を連想させる衣装を批判した。

「ホロコーストの歴史をゆがめるネオナチに利用されてしまうことを危惧している」

-今回の展示会で工夫したことは何か。

 「私たちと日本の若者が、共に展示内容を議論して作り上げたことが特徴だ。体験者が亡くなると、声を上げる人が少なくなり、戦争体験の話を聞けない世代も出てくる。歴史が事実と異なる方向に上書きされることを恐れている。若者が責任を持って経験できる場を共につくることが大切だと思う」

(聞き手 宮城修)