日本来た意味 分からない ネパール留学生、過酷な労働で学業に支障


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 沖縄県内在住のネパール人男性が日本語学校在学中、アルバイト先の工場で鉄骨の間に指を挟み、危うく切断するけがを負っていたことが分かった。日本語が不自由だった男性は学費や生活費などのため経験のない肉体労働に従事。「毎日疲れて勉強に集中できなかった。日本に来た意味が分からなくなった」。疲労で学業に専念できず、留学の目的を見失うほど追い込まれていた。

 「指先が取れそうに、ぷらぷらしていた。皮だけでつながっているようだった」。日本語学校の授業が終わると自転車で約40分かけてアルバイト先の工場に向かった。1日約4時間、強い日差しに照らされながら重い鉄骨を運んだり、4~5本まとめて機械で曲げたりする作業をした。疲労で頭が回らないまま作業に当たっていたある日、機械にかけた鉄骨の間に指を挟んだ。かろうじて指の切断は免れたが、左手の薬指には今も縫合の痕が残る。

 「日本でしばらく働いて稼いだ後、ネパールで家族と暮らしたい」。夢を抱いて学校に入学した男性は当時、ほとんど日本語が話せなかった。日本語が不十分な学生が肉体労働のアルバイトに就くことが多い。疲労のため学業に集中できない事例もあるという。

 負傷から約1週間後、学校から荷下ろしのアルバイトを紹介された。「けがもしたので断ったが『(学校側は)勝手にしろ』という感じだった。学費が払えないと思ったのかな」

 日本語学校を卒業後、帰国したい気持ちを抑えて県内で進学した。「いい仕事に就いて家族にお金を送りたい」。男性は現在、コンビニで深夜勤のアルバイトをしている。「(法律で定められている)週に28時間しか働けないから、深夜手当の出るバイトがいい。寝不足だが肉体労働よりはいい」と話し、傷痕の残った指先に視線を落とした。(嘉数陽)