【島人の目】伊国民投票が示唆すること


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 12月4日、イタリアで憲法改正の是非を問う国民投票が実施された。改正案の主旨は、同じ権限を有する議会上院と下院のうち、上院の権限と定数を大幅に削って、事実上下院のみで法案議決ができるようにする、というものだった。レンツィ前首相は改正案を推進したが大敗。辞任を余儀なくされた。

 勝ったのはポピュリスト(大衆迎合)政党の五つ星運動。これに極右の北部同盟などが賛同した。彼らの躍進は、イギリスのEU(欧州連合)離脱とトランプ候補が勝った米大統領選に続く「大規模体制反対運動」、あるいは「ポピュリズムの勝利」とみられていて、こうした動きに対し欧州では危機感が高まっている。

 イタリアの国民投票で大勝した五つ星運動は、トランプ次期大統領を「一心同体」とまで呼んで信奉し、北部同盟はトランプ主義を賞賛すると同時に、フランスの国民戦線などの欧州極右勢力と連携する道を模索している。彼らの成功は、来年予定されているフランス大統領選、オランダおよびドイツの総選挙などで極右勢力が飛躍する兆候ではないかと危惧されている。

 イタリアでは五つ星運動が政権を奪取する可能性さえ出てきた。それはEUの崩壊にもつながりかねない危険なものだ。なぜなら五つ星運動の党是は、イタリアをまずユーロから、次にはEUから離脱させることだからだ。英国に続いてイタリアも離脱となればほぼ確実にEUは瓦解する。

 EEC(欧州経済共同体)として発足したEUは、その後政治の一体化も目指しながら、欧州での「究極の戦争回避装置」としての役割も果たしてきた。そのEUが消えてしまえば、欧州内の国々の分断と対立が加速し、紛争や戦争が絶えなかった過去に戻る可能性が高まる。由々しき事態なのである。
(仲宗根雅則 イタリア在、TVディレクター)