沖縄県内に留学するネパール人ら外国人留学生が、入管難民法で規定された「週28時間以内」の枠を超え、違法に就労する実態が常態化している。発展途上国から見れば高い学費や寮費、生活費を工面するため、勉学より働くことを優先せざるを得ない「出稼ぎ留学生」の状態に陥る留学生もいる。バイトの仲介料を搾取するブローカーの存在や28時間超えの就労を黙認する学校側の問題もあり、留学生だけに責任を押し付けるには酷な現状がある。
疲弊
「働くのが大事。先生も分かっているでしょう」。
県内の日本語学校で教員をしていた女性は、授業中に居眠りを注意した留学生の言葉にショックを隠せなかった。高い学費を払っているのに、授業中に寝ている留学生や辞書すら買っていない留学生ら。本末転倒な状況に怒りを感じた。
「学校側も違法な労働を知りながら黙認している。学生も先生も互いに学び合える環境を想像して教員になったが、理想は遠かった」
一般的に、留学生らは1年間分の学費と寮費を自国で払った上で来沖し、勉学に励む。2年目以降の学費や生活費はバイト代から捻出するが、28時間の規制を守ると生活は困窮してしまう。
ネパールから来た20代の男性留学生は「日本語学校を卒業して専門学校に入る時も高い学費を払う。みんな1年目から働いて貯金しないといけない」と説明する。「入管に見せる通帳とは別の通帳を持っている。バイトを掛け持ちすれば、ばれることはない」
中間搾取
留学生が多く働くホテルの関係者は「留学生はホテル業界にとって大きな力だ」と力説する。県内の人材を求めているが、応募は少ない。急増するネパール人留学生は積極的に働き口を探しており、貴重な存在だという。
一方、留学生の募集にも難しさがある。「求人誌は読めないので紹介を頼る」(ネパール人留学生)ため、募集を掛けても応募は少なく、人材派遣会社やブローカーを頼ることもある。ホテル関係者は「ブローカーにもちゃんとした人もいればそうでない人もいる。支払ったバイト料の全てを留学生がもらっているかは分からない」と言葉を濁す。
専門学校に通う別の留学生は「留学生は先輩を頼る。先輩に言われればバイトの紹介料も払ってしまう。初めは日本語も分からないし、そうするしかない」と声を落とす。
海外在住ネパール人協会のアヌジュ・タパ幹事長は、学校側の学生募集の方法についても疑問を投げ掛けている。「仲介業者が『稼げる』と言って募集することもある。勉強するために留学するはずなのに、勉強をせずに労働を優先する学生が来てしまう。学校は学生を集め、あとは学生の責任にする。ビジネスになっている」と厳しく批判した。「学生と学校と入管、それぞれがかみ合っていない。関係者全体で議論していく必要がある」と指摘した。(嘉数陽、稲福政俊)