沖縄県内市町村の国民健康保険財政が悪化している問題で、前期高齢者の加入率に応じて各市町村に交付金が支払われる制度が始まった2008年度から15年度までの8年間で、各市町村が一般会計から国民健康保険特別会計に法定外繰り入れした総額が637億6028万2千円もの巨額に上っていることが琉球新報社が実施した国保財政のアンケートで分かった。県内41市町村中37市町村で一般会計からの法定外繰り入れを除いた実質単年度収支の赤字が発生している。各市町村は財政調整基金をはじめ一般会計全般から赤字を補てんしているほか、国保税の引き上げに踏み切った市町村もあり、住民サービスにも影響を及ぼしている。
沖縄戦の影響で全国と比べ前期高齢者(65~74歳)の割合が低く、前期高齢者の割合を基に算出される交付金が低いことが、国保財政の悪化につながっている。
15年度の実質単年度収支の赤字額も99億4千万円に上っている。国保税の引き上げについてはうるま市、浦添市、石垣市、国頭村、読谷村、粟国村の6市村がすでに実施しているほか、6市町村が引き上げを検討しており、26市町村が「今後引き上げを検討する可能性がある」と回答した。
国保の赤字問題の解決方法については、一括交付金の活用を含め全市町村が国の責任で沖縄の特殊事情を踏まえた解決策を提示することを求めた。
前期高齢者交付金の制度が始まった08年以降に「収支状況が悪化した」と回答したのは34市町村、「収支状況に変化はない」が6町村、「収支状況が改善した」は北大東村1村にとどまった。赤字補てんの方法は24市町村が「一般会計からの法定外繰り入れ」、13市町村が「法定外繰り入れと翌年度の国保特別会計からの繰り上げ充用を併用」と答えた。
県内11市の国保担当課長で構成する県都市国民健康保険研究協議会のまとめでは、前期高齢者交付金の制度導入後、沖縄を除く46都道府県ではおおむね国保財政が改善している。国が予定している支援策などで18年度までに全国のほとんどの市町村国保で赤字が解消するとみられているが、沖縄はその後も24年度前後まで実質単年度収支の赤字が継続すると予測されており、18~24年度の総額は数百億に上る可能性がある。
昨年11月には県と県内市町村長、議会の代表者ら総勢47人が政府要請行動を実施し、沖縄の特殊事情に配慮した新制度の導入や、国保の実質赤字解消に一括交付金で財政支援することなどを求めたが、国から具体的な対応策は示されていない。(外間愛也、田吹遥子)