岩礁破砕巡り提訴も 沖縄県、国が申請拒否の場合


この記事を書いた人 新里 哲

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に関して、政府が3月末に期限を迎える岩礁破砕許可の更新を県に申請せず、そのまま工事を続けることを検討している件で、沖縄県は許可なく工事をするのは違法だとして、国を相手取った提訴を検討していることが分かった。県関係者が明らかにした。申請回避で知事権限の無効化を狙う政府に対抗する目的。県は岩礁破砕許可手続きを定めた漁業調整規則は違反事例に対する刑事罰も定めていることから、政府側の責任者を刑事告発することや、事業者の沖縄防衛局を行政指導するなどの選択肢も併せて検討している。

 岩礁破砕許可は県漁業調整規則に基づくもので、公有水面埋立法に基づく埋め立て承認と並び、沖縄防衛局が辺野古新基地建設工事を進めるのに必要な許可。前知事が出した破砕許可はことし3月末に期限が切れる。

 一方で政府は、2014年に名護漁業協同組合が沖縄防衛局の岩礁破砕行為に同意し、埋め立て工事期間5年分の漁業補償約36億円を受け取ることに同意したことを理由に「漁業権は消滅しており、漁業権を前提とした岩礁破砕許可は必要ない」(関係者)と判断した。現在、岩礁破砕許可の更新を県に申請するか、申請は不要として海上工事を続けるか検討している。

 だが県は(1)漁業権は現場海域が護岸で完全に囲い込まれなければ消滅しないというのが行政の一般認識(2)漁業権の免許権者は知事であり、漁協が漁業権消滅に同意しただけで効力は自動的に失われない(3)同じく地元漁協が漁業権の消滅に同意し、漁業補償も受けた那覇空港の第2滑走路建設工事では、防衛局と同じ政府機関である沖縄総合事務局が1月に岩礁破砕許可の更新を県に申請した―などの点から、更新申請は必要だと指摘している。