沖縄県出身の映像作家・美術家の山城知佳子さんが、5月14日まで京都で開催中の「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」に参加している。「土の唄」と題し、昨年発表した最新作「土の人」など映像・写真6作品を公開している。近年、各地の展覧会に招待されるなどその才能が国内外から評価を受けている山城さん。同27日からは沖縄で9年ぶりの個展を開く。自ら「ターニングポイント」と位置付ける今年、さらなる進化に注目したい。(大城周子)
京都国際写真祭は国内外で活躍する作家の作品を、歴史的な建造物やモダンな近代建築を使って展示する。日本からは山城さん、アラーキーこと写真家の荒木経惟さん、写真家の吉田亮人さんの3人が出展している。山城さんは昨年の「あいちトリエンナーレ」で発表した「土の人」が大きな話題となり、今回の招待にもつながった。
「土の人」は、軍事基地のある沖縄と韓国済州島を舞台に、3面にそれぞれ異なるシーンが展開される23分間の作品。緊張感を伴った映像美に加えて、声や拍手といった人が生み出す音を印象的に操り、不思議な迫力を持って見る者を揺さぶる。京都国際写真祭の今回のテーマは「LOVE」。世界的に国家主義的な傾向が強まる中、人と人をつなぐ本質的なLOVE(愛)を問い掛けるもので、死者と現代を生きる人のつながりを探る山城さんの作品にも通ずるものがある。
京都国際写真祭の後、5月27日から6月11日までは、那覇市牧志のRENEMIA(レネミア)で個展を開く。写真作品を展示するほか、毎週末には映像作品の上映やトークイベントも予定している。11日には「土の人」を沖縄で初公開する。山城さんは「『土の人』はこれまで制作してきた作品の要素が詰まった集大成の作品。沖縄でインスピレーションを得たものを、きちんと沖縄の人に見せたいという思いがあった」と心待ちにする。
国内外の展覧会へ相次いで参加し、3月には国際的な活躍が期待される若手作家を対象とした「アジアン・アート・アワード」のファイナリストに選ばれた。海外の映画祭へ初めて作品を出品するなど、自身もさらなる飛躍を求めている。
一貫して沖縄の複雑な状況を見つめ、歴史や地政学的観点から表現し続けてきた。次に見据えるステージは、映画の世界だ。「土の人」の反響に確かな手応えは感じているという。「一人の人間に迫り、その生きざまから世の中を見る描き方をしたい。今年はターニングポイントになると思う。というか、しなきゃいけない」。気鋭のアーティストが、新たな扉を開こうとしている。