「手塚治虫に憧れている」と語る神原小5年の盛口海君(10)=那覇市=は、毎日学校から帰ると「かぶらペン」や「Gペン」と呼ばれる専用ペンを握り、自作の漫画に取り掛かる。5歳から書き始めたというオリジナルの漫画はすでに数十冊を数え、中には動物を主人公とした物語などシリーズ化した大作もある。話や登場人物を思い付いたらすぐに“ネタ帳”に書きためて作品に生かすなど、漫画家になる夢に向けてまい進中だ。
海君は昨年、沖縄文壇の登竜門「おきなわ文学賞」の漫画部門で奨励賞を受賞した。受賞作「フィールドウォー」はサバンナに住む動物の争いを描く。力強いタッチが特徴の作品で「効果線」という漫画独特の技法に挑戦している。
父で生きもののイラストレーターとして知られる満さん(53)の影響を受け、幼いころから絵を描くことに夢中だった。父の海外取材に家族で同行する機会も多く、旅に出ると一つの漫画を一気に描き上げることもあるという。
母、佳子さんは海君の漫画を最初に読むため、漫画の裏表紙に「編集者」として名前も記されている。佳子さんは「小さいころから模写をすることが好きで物語を書く中で漢字を自分で調べたりしていた。漫画を描き始めると止まらないが、集中して物事をすることはいいことだと思う」と目を細める。
海君は現在、次回作となる「金城と真常」の構想を練り、ネタ帳にアイデアを書き込んでいる。琉球の五偉人と呼ばれ、琉球王朝の産業の基礎を築いた儀間真常が現代に住む「金城」の中に魂として乗り移るという物語で、SF作品への初挑戦となる。海君は「読んでいる人がおもしろく、本の世界に入って行くような漫画を描き続けたい」と意気込んだ。