沖縄の日本復帰から15日で45年を迎えるのを前に、鶴保庸介沖縄担当相に今後の沖縄振興の展望などを聞いた。鶴保氏は所得格差や貧困問題の解消に向け人材育成の必要性を指摘したほか、力を入れる渋滞対策では、今後AI(人工知能)を活用した渋滞予測を沖縄で実証する考えなどにも言及した。
(聞き手 當山幸都)
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―45年間の沖縄振興や、折り返しを迎えた現在の振興計画の評価と課題は。
「社会資本整備などそれなりの評価はあったが、所得格差や貧困の連鎖状態はまだ続いている。自立型経済に向け、まずは人材育成に注力し、それを支える産業育成に取り組んでいく」
―基地問題で政府と県が対峙(たいじ)する状況が続く。基地と振興の「リンク」をどう考えるか。
「基地の返還後にどう青写真を描かなければならないかという意味で、振興策と基地問題は関わらざるを得ない。しかし、振興額は(基地と)リンクしているものではない。自立型経済に移行していくためどんなサポートもするという意識で頑張っていきたい」
―「骨太方針」や次年度予算編成に向けた考えは。
「(骨太には)これまでの延長線上にある言葉の繰り返しではなく、具体的に踏み込んだものにしたい。(予算では)那覇空港の滑走路増設や大型クルーズ船受け入れ、ICTによる離島の通信教育など、必要なことは引き続き推進する」
「渋滞対策をより加速度、優先順位をつけやっていく。国交省で検討しているAIを使った渋滞予測について、実証化を沖縄で真っ先にできないか考えている。AIの効果は研究段階だが、閉じられた空間の沖縄でやるのが一番いいと思う」
―西普天間住宅地区跡地の「国際健康医療拠点」形成にはどう取り組むか。
「日本の医療拠点として立ち行く姿を考えること、かつ沖縄の格差是正や雇用創出、自立型経済にしっかり根付いたものであることの二つの視点を忘れてはならない。例えば民間企業が入り、医療系の産業クラスターが育つ素地をつくることなどを共に進め、全国のモデルケースにしたい」
―人材育成や貧困対策、所得格差是正などに関しどう特色を持たせるか。
「全国一律の基準で考え方を限定せず、例えば特区を使うなど法令省令の中でもっと広げることがあってもいい。(検討中の)給付型奨学金も、全国一律の考え方では沖縄に合っていないのではないか、沖縄の貧困の連鎖を断ち切る人材育成につながる奨学金に変えることができないかと考え部局に指示を出した。来年度に間に合う形で、年内で制度設計を考えたい」