辺野古向け土砂に懸念 採取予定の奄美 サンゴの環境悪化


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古での新基地建設で、埋め立て用土砂が採取される予定の鹿児島県奄美市住用町(すみよう)周辺海域で、これまでの採石に起因する環境破壊が進んでいる。沿岸部の自然環境や海洋生物の実態を確認するため10日、日本自然保護協会と海の生き物を守る会が潜水調査し、湾内の海底に堆積した土砂や、土砂に覆われたサンゴ礁の一部死滅を確認した。

 調査に当たった日本自然保護協会の安部真理子主任は、採石場から流出した土砂が汚染源の一つになっていると指摘。「新基地建設に伴い環境が破壊されるのは、当該地域(沖縄)だけではない」と警鐘を鳴らした。

 潜水調査は度重なる土砂崩れと、雨天時の赤土流出に長年悩まされている地元住民の要望を受け実施した。採石場は住用町市(いち)集落にあり、採石場前と、沖合500メートルにあるトビラ島の周辺海域で、土砂の堆積状況やサンゴの被度を調べた。安部主任によるとトビラ島のサンゴ礁は健全だった一方で、採石場前の海底には最大27センチの土砂が堆積し、沖合でも土砂の流出が広がっていることを確認した。

 採石場前の海域については昨年2月の調査で、基準値を大幅に超える水質汚濁が確認されている。安部主任は「辺野古移設問題だけでなく、採石によって奄美の自然にも深刻な影響が出ている」と述べ、行政による事業者への指導強化を訴えた。

 15年5月の潜水調査に携わった海の生き物を守る会の向井宏代表は「当時も細かい泥がサンゴを覆い、生き物の姿がほとんど見えない『死の海』だった」と振り返った。また昨今、奄美大島などで複数の採石場が新たに開所しており「辺野古埋め立て工事の本格化に備え、採石業者が急ピッチで採石の確保に走り回っている可能性もある」と指摘した。(当銘千絵)