米海兵隊トップのネラー総司令官が24日、北朝鮮の核・ミサイル開発を念頭に沖縄の海兵隊のグアム移転計画を見直す可能性に言及した。ネラー氏の発言からは、在沖米海兵隊のヘリコプターや航空機をグアムに移転するのか、グアム移転予定だった機材を他地域に移転、または沖縄に留め置くのかは不明。だが、この発言は米国がその時々の脅威認識によって、自国の軍隊の配備を柔軟に変更し得ることを示すものだ。これまで日本政府がグアム移転計画について繰り返してきた「沖縄の負担軽減」の論理は、そこには見えない。
そもそも在沖米海兵隊のグアム移転が決まった2006年の日米合意では、沖縄から8千人の兵隊と家族9千人がグアムに移転、移転対象は「司令部」とされていた。しかしその後の12年4月の移転案見直しでは、グアムに移転するのは在沖海兵隊のうち4千人のみで、5千人はハワイや豪州に分散すると変更された。司令部はグアムではなく沖縄に残り、即応性の高い海兵空陸任務部隊(MAGTF)をはじめとする戦闘部隊がグアムやハワイなど国外に移転する内容に変わった。
在日米軍の動向を監視する市民団体「リムピース」編集長の頼和太郎さんは、ネラー氏の発言から「在沖海兵隊のヘリや航空機をグアムやハワイなど、より北朝鮮から離れた所に移動させるのではないか」と分析する。グアムが北朝鮮のミサイルの射程内に入っても「日本よりは距離がある。ミサイルが発射されても到達まで時間がかかる。その間に反撃準備をすることができる」とみる。
その上で、機材を含め多くの戦力が一時的にでもグアムやハワイに移るとなれば「滑走路を持つ辺野古の新基地は不要であることは明らかだ」と指摘した。
日本政府がこれまで幾度となく海兵隊のグアム移転は「沖縄の負担軽減」のためと主張してきた。しかしこれまでのグアム移転計画の変遷をたどってみても、米軍の配置は米軍側の戦略でいかようにも変わってきた。
軍の論理を優先して組み立てられてきたもので、「沖縄の負担軽減」は後付けであることを示している。(仲井間郁江)