沖縄戦、新たな視点で 県史刊行記念、那覇でシンポ


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
沖縄戦研究の現状などについて議論を展開する研究者ら=28日、那覇市の県立博物館・美術館

 県教育委員会は28日、3月に発行した「県史各論編6 沖縄戦」の刊行を記念し、「『沖縄戦』を語る」と題したシンポジウムを那覇市の県立博物館・美術館講堂で開いた。約220人が参加した。県史の刊行に携わった研究者らが登壇し、意義や沖縄戦研究の現状について議論を展開した。

 前半の基調講演では沖縄国際大の吉浜忍教授と関東学院大の林博史教授が県史刊行の意義などについて紹介した。吉浜さんは県史の特徴を「沖縄戦だけで完結させず、戦後の継承の問題も議論している点にある」と述べた。林さんは今後の研究課題について「東南アジアや南洋諸島などで、沖縄の人々がどのように戦争に関わったかを明らかにする必要がある」と話した。

 後半のパネル討議では執筆者ら7人が登壇し、沖縄戦の研究成果や課題について議論を展開した。「日本軍慰安所」の項目を担当したひめゆり平和祈念資料館の古賀徳子さんは、辻遊郭の女性も慰安所に動員されたことに触れ「(朝鮮半島など)植民地だけでなく、沖縄の女性も慰安所で性被害を受けたことを明らかにできた」と述べた。

 参加した沖国大2年の山田珠妃さん(19)は「沖縄戦研究でこれまで光の当たらなかった分野に、若い研究者がスポットを当てていることが分かった」と話した。

 県史の沖縄戦編は増刷分もすでに完売し、県教委は再増刷を検討している。県立図書館や各市町村の図書館などでも閲覧できる。