鹿児島で外来クモ繁殖 沖縄侵入恐れも


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
鹿児島県指宿市で初めて確認された特定外来生物ハイイロゴケグモの成体(指宿市環境政策課提供)

 名護市辺野古で進められている米軍普天間飛行場代替施設工事に使われる埋め立て土砂の搬出元である鹿児島県で、飼育や搬出が原則禁止されている特定外来生物「ハイイロゴケグモ」の繁殖が深刻となっている。これまで確認されていなかった薩摩半島の南端に位置する指宿市では5月16日の初確認を皮切りに、29日までのわずか2週間で5件が確認された。有識者らは「厳格な取り締まりを講じず搬出を認めれば、どう猛な外来種が沖縄県内に侵入し、島しょの生態系を脅かす」と警鐘を鳴らす。

 沖縄防衛局が2013年に提出した辺野古の埋め立て工事に係る申請書では、九州・瀬戸内の7地区13カ所の採石場から岩ずりを調達することになっている。中でも沖縄に最も近い奄美大島を含む鹿児島県からは、相当量の土砂採取が見込まれる。

 鹿児島県によると、同県内では今回を含め01年以降28件の確認例が報告されており、生息範囲は拡大傾向にあるとみられる。

 海の生き物を守る会の向井宏代表は外来種について「一般的に侵略性・繁殖性が共に強く、いったん新たな環境に入り込めば一瞬にして広がり、もともとあった生態系を脅かす危険性が非常に高い」と危惧する。

 自然と文化を守る奄美会議の大津幸夫会長は、これまでに鹿児島県議会に対し特定外来生物の移出入を禁止する県条例の制定や、第三者委員会の設置を訴えてきた。その上で「世界自然遺産への登録を含め、外来種対策は喫緊の課題だ」と強調し、行政主体の取り締まりの必要性を説いた。

 ハイイロゴケグモを巡っては、沖縄総合事務局が手掛ける那覇空港第2滑走路拡張工事で2016年3月、石材を採取する奄美大島の採石場周辺からも見つかっている。(当銘千絵)