児童・生徒の平和メッセージ 最優秀賞は上原さんと久手堅さん


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図画部門の高校生の部で最優秀賞に決まった久手堅彰哉さん(知念高1年)の作品「再生の大地」

 県平和祈念資料館は9日、第27回「児童・生徒の平和メッセージ」の入賞者を発表した。詩部門では最優秀賞に宮古高校3年の上原愛音さん(17)の作品「誓い~私達のおばあに寄せて」が選ばれた。上原さんは今月23日に糸満市で開かれる沖縄全戦没者追悼式で「平和の詩」として朗読する。

 上原さんの作品について詩部門の審査委員長を務めた首里中学校の仲原英孝教諭は審査講評で「平和の尊さを強く感じることのできる作品。『誓おう』という言葉の繰り返しが読者に訴え掛け、共に声に出して平和を誓いたくなる詩だった」と評価した。

 そのほか、図画部門の高校生の部で最優秀となった知念高校1年の久手堅彰哉さんの作品「再生の大地」が平和メッセージ展のポスターに採用された。作文部門の小学校低学年の部で最優秀賞となった白保小学校(石垣市)1年の森心羽菜さんの「えがおでへいわをつくろう」が沖縄全戦没者追悼式で配布される冊子に掲載されることが決まった。

 本年度は県内の小中高校生から図画1302点、作文505点、詩1260点の合計3067点の作品が寄せられた。図画部門の優秀、優良作品、作文・詩部門の最優秀、優秀作品をパネルにして、今月23日から県内5カ所と米ハワイ州で順次展示会が開かれる。

 各部門の最優秀賞は次の通り。

 【図画の部】
 小学校低学年 石川日世里(真喜良小2年)▽小学校高学年 木田夕海(山田小6年)▽中学校 仲宗根莉愛(上野中3年)▽特別支援 天願綾音(南風原高支3年)

 【作文の部】
 小学校高学年 運天彩和(与儀小5年)▽中学校 安仁屋紫月(開邦中2年)▽高校 新里美結(那覇国際高2年)▽特別支援 金城夏海(沖高特支2年)

 【詩の部】
 小学校低学年 三島香奈子(白保小1年)▽小学校高学年 上原一路(糸満南小6年)▽中学校 相良倫子(港川中2年)▽特別支援 川野友暉(沖高特支1年)

誓い~私達のおばあに寄せて  県立宮古高校3年 上原愛音

今日も朝が来た。
母の呼び声と、目玉焼きのいい香り。
いつも通りの
平和な朝が来た。
七十二年前
恐ろしいあの影が忍びよるその瞬間まで
おばあもこうして
朝を迎えたのだろうか。
おじいもこうして
食卓についたのだろうか。

爆音とともに
この大空が淀んだあの日。
おばあは
昨日まで隠れんぼをしていたウージの中を
友と歩いた砂利道を
裸足のまま走った。
三線の音色を乗せていた島風に
鉄の臭いが混じったあの日。
おじいはその風に
仲間の叫びを聞いた。
昨日まで温かかったはずの冷たい手を握り
生きたいと泣く
赤子の声を抑えつけたあの日。
そんなあの日の記憶が
熱い血潮の中に今も確かにある。
決して薄れさせてはいけない記憶が
私の中に
私達の中に
確かに刻まれている。
少女だったおばあの
瞳いっぱいにたまった涙を
まだ幼かったおじいの
両手いっぱいに握りしめたあの悔しさを
私達は確かに知っている。
広がりゆく豊穣の土に芽吹きが戻り
母なる海がまた
エメラルドグリーンに輝いて
古くから愛された
唄や踊りが息を吹き返した今日。
でも
勇ましいパーランク―と
心臓の拍動の中に
脈々と流れ続ける
確かな事実。

今日も一日が過ぎゆく。
あの日と同じ刻(とき)が過ぎゆく
フェンスを飛びこえて
絞め殺されゆく大海を泳いで

癒えることのない
この島の痛み
忘れてはならない
民の祈り

今日響きわたる
神聖なサイレンの音に
「どうか穏やかな日々を」
先人達の願いが重なって聞こえる。

おばあ、大丈夫だよ。
今日、私達も祈っている。
尊い命のバトンを受けて

祈っている。
おじい、大丈夫だよ。
この島にはまた
笑顔が咲き誇っている。
私達は
貴方達の想いを
指先にまで流れるあの日の記憶を
いつまでも
紡ぎ続けることができる。

誓おう。
私達はこの澄んだ空を
二度と黒く染めたりしない。
誓おう。
私達はこの美しい大地を
二度と切り裂きはしない。
ここに誓おう。
私は、私達は、
この国は
この世界は
きっと愛しい人を守り抜くことができる。
この地から私達は
平和の使者になることができる。

六月二十三日。
銀の甘蔗(かんしょ)が清らかに揺れる今日。
おばあ達が見守る空の下
私達は誓う。
私達は今日を生かされている。