県教育委員会は8日、琉球王府の444年間の外交文書をまとめた「歴代宝案」の校訂本15冊の刊行を記念したシンポジウムを県公文書館で開いた。編集委員が中国、朝鮮や東南アジア諸国との文書を収録し、東アジア史、東南アジア史を解明する第一級史料である歴代宝案復元の意義や今後の展望について語った。250人が来場し、立ち見も出るほど盛況だった。
基調講演で田名真之県立博物館・美術館館長は、歴代宝案の内容について「中国に渡る船についていつ、誰が誰と一緒にどういう目的で乗ったかまで分かるほど詳細な記録がある」と説明した。編集された理由について「久米村の人々が家譜を編集するために歴代の外交文書を見直し、文書の価値が認識された」と述べ、「歴代宝案の編集が『中山世譜』の編集へとつながるなど、自らのアイデンティティーを確認する動きの契機となった」と語った。
生田滋大東文化大学名誉教授が「『ビッグデータ』としての『歴代宝案』」と題して基調講演した。宝案に記された進貢船派遣の頻度や国王が送った貢ぎ物の量の推移から王府の支配の形の変化が分かると説明した。「記録をデータ化することで、当時の貿易の実態も明らかになるのではないか」と述べ、今後の研究に期待を寄せた。
パネルディスカッションでは編集委員が、中国や台湾の研究者とも連携し、30年近くかかった大プロジェクトを振り返った。