「正当な権利縛られる」 「共謀罪」法施行、市民運動の統制に懸念


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
米統治下で「愛唱歌集」が回収された当時を振り返り、「共謀罪」法に懸念を示す石川元平さん=10日

 11日施行された「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法に関し、市民運動を抑圧するような運用を懸念する声が沖縄から改めて上がっている。日本復帰前の米統治下で言論統制を経験した石川元平さん(79)=元沖教組委員長=は「正当な権利が反憲法的な法によって取り締まられ、縛られる」と述べ、「共謀罪」法と、表現の自由が守られていなかった当時の共通性を指摘した。

 1961年2月、沖縄教職員会が発行し、県内の学校へ配布した歌集「愛唱歌集」約4千部が回収を指示される事態に陥った。米側の意に反する労働歌などを含むことが問題視された。

 米統治下の沖縄では、出版物を自由に発行できず、米民政府が55年に出した布令で許可制となった。米民政府が気に入らない出版物は、出版を不許可にできる仕組みだ。表現の自由は守られていなかった。

 愛唱歌集は3部構成で「教職員会歌」「沖縄を返せ」や日本民謡、外国民謡など121曲を収録していた。

 当時23歳で沖縄教職員会の総務部職員だった石川さんは、歌集を回収し表現の自由を奪う米側の行為に「けしからんという怒りが湧いた」と述べ、米側の姿勢が復帰運動の勢いを強めたことを強調する。

 政府は「共謀罪」法に関し一般人は関係ないと説明するが、石川さんは「いったん作られたら運用するのは為政者だ。恣意(しい)的な運用につながるのが怖い」と懸念する。

 「共謀罪はいつか来た道だ。戦前の治安維持法にも似ている」と話す。さらに「成立、施行されたからといって諦めてはいけない。一番、矛盾が見える沖縄から疑問を発し、廃案にしていく必要がある。子や孫に申し訳ない。世代責任を強く感じている」と廃案を訴えた。(古堅一樹)