那覇市内で433棟ある31メートル(約10階建て)以上の高層建築物のうち、15・5%に当たる67棟で91件の消防関係法令違反があることが分かった。13日までに本紙の那覇市消防局への情報公開請求で判明した。消防法で選任が定められる防火管理者が選任されてなかったり、選任を消防へ届け出ていなかったりする違反が多い。識者は「県民の防災意識の低さが消防関係法令の違反につながっている」と指摘している。
違反内訳は、防火管理者の選任などソフト面に関する消防法第8条違反が59件で最多となっている。うち防火管理者が選任されていないなどの事例が25件。次いで消火器やスプリンクラーなどハード面の維持管理に関する消防法第17条違反が21件、避難経路に物を置くなど那覇市火災予防条例違反が11件と続く。
那覇市消防局による2017年6月26日までの約1年間の立ち入り検査や届け出の調査で明らかになった。高層建築物にはマンションやアパート、ホテル、オフィスビル、商業施設などが含まれる。
防火管理者は消防計画の作成や、計画に基づく避難訓練の実施などが義務付けられる。
防災士で社会福祉士の稲垣暁・沖国大非常勤講師は「大規模火災が少ないことから県民に『火事が起こらない』などと誤解があることが、消防関係法令違反につながっているとみられる」と指摘している。
那覇市消防局予防課は「防火管理者は講習を受けて資格を取る必要があり、早めに資格を取り対策してほしい」と呼び掛け、消火器などの消防用設備について「年がたつと不具合が出てくるので、点検・修理してほしい」と維持管理の重要性を指摘した。
全国消防長会や那覇市消防局によると、県内に18ある各消防本部管内には16年4月1日現在(那覇市消防局は17年6月26日現在)、高層建築物は530棟ある。うち那覇市内には全体の81・4%を占める433棟があり、うち県内に2棟しかない100メートル以上の高層建築物も含まれる。
(金良孝矢)