「伯母さん、会いたかった」 ブラジル県系3世のアレクサンドルさん 小橋川さんと対面


この記事を書いた人 大森 茂夫
捜していた伯母の小橋川政子さん(左)と対面を果たした新里・アレクサンドル・秀樹さん=15日、那覇市寄宮

 【浦添・那覇】JICA沖縄(浦添市)の研修員としてブラジルから来県しているブラジル県系3世、新里・アレクサンドル・秀樹さん(29)が15日、捜していた伯母の小橋川政子さん(73)=那覇市寄宮=と対面を果たした。政子さんは2005年に他界した新里さんの祖母・静子さん=享年84=の長女で、静子さんが1954年、ブラジルに渡った際に沖縄の実家に残った。政子さんは静子さんの他界後、ブラジルの親類との連絡が途絶えていた。アレクサンドルさんは「まさか会えるとは思わなかった。ずっと存在を聞かされていた伯母に会えてうれしい」と対面を喜んだ。

 静子さんは沖縄戦で夫を失い、名護市の実家に身を寄せた。知人の紹介で既にブラジルに移民していた新里ショウケイさんと再婚することになり、一人娘の政子さんを実家に預けてブラジルに渡った。

 政子さんは「戦後は生活が厳しくて、母は朝から晩まで働き詰めだった。小学3年のころに母がブラジルに行くことになったが、家には祖父や叔母がいたので、それほど寂しさは感じなかった」と振り返る。

 静子さんはブラジルで農業や青果物の卸売りなどに携わり、アレクサンドルさんの父親を含む4男を育てた。その間、政子さんに手紙を送り続け、ブラジルの家族の写真も同封していた。

 政子さんは自宅で保管していたブラジルからの写真を見詰め「23年前に母親が沖縄に戻った際に『ブラジルに遊びにおいで』と誘ってくれた。飛行機が怖くて行けなかったが、手紙のやりとりはずっと続けていた」と母をしのび、訪ねてきたおいに「会いに来てくれてありがとう」とほほ笑んだ。

 政子さんの長男、努さん(49)はブラジルのいとことの対面に「疎遠になっていたブラジルの親類に会えてうれしい」と述べ、アレクサンドルさんと連絡先を交換した。

 土木技師のアレクサンドルさんは、JICA沖縄が実施している中南米の日系人を対象にした「日系研修員受入事業」で7月末まで約1カ月の予定で来県。宜野湾市の具志堅建築設計事務所で研修する傍ら「滞在中にぜひ親類に会いたい」とJICA職員を通じて本紙に連絡した。

 本紙の取材で政子さんが健在で、那覇市内に住んでいることが判明した。対面が実現した7月15日は、くしくもアレクサンドルさんの誕生日。アレクサンドルさんは「祖母が引き合わせてくれた。血のつながりを大切にして、これから新たな絆を築いていきたい」と話した。(松堂秀樹)