全国、九州を跳び、駆ける 屋我地ひるぎ学園 陸上競技で躍動 小規模校が個の力示す


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県中学夏季陸上の男子共通棒高跳びを制して全国大会に出場する仲松潤一郎(前列右から3人目)、2年女子800メートル頂点の花田佳乃(同4人目)と陸上部員たち=16日、沖縄市の県総合運動公園陸上競技場

 部員は6人でも個人では負けない―。沖縄市の県総合運動公園陸上競技場で15、16の両日に行われた陸上の県中学校夏季競技大会で、名護市の小中一貫校・屋我地ひるぎ学園が躍動した。3年の仲松潤一郎は男子共通棒高跳びを4メートル00で制して県勢11年ぶりに全国標準記録を突破し、全国大会へ。そして2年女子800メートル制覇の花田佳乃は九州大会へ。小学生から陸上クラブで磨く選手が多い中、部活動や家族で練習を重ね続ける。練習を支えるのは、ただひたすらに記録を「超えた時がうれしくて」(仲松)。小規模校ならではの楽しさや苦労も経験する10代が、1センチ、1秒の更新へと真夏を疾走する。(石井恭子)

 男子共通棒高跳び決勝。3メートル50から始まり、70、90と20センチずつ記録を伸ばした後、大会では自身初となる4メートルを2度失敗した仲松。土壇場の試技3度目でバーを超えると「今までに味わったことのない感じで、体の中から『うれしい』思いが湧き上がった」。目指していた「必ず全国へ」との思いを有言実行した。

 本来の陸上部は6人の同校。もともと別の部活動をしていた選手も含め、各競技の県中学校体育連盟の大会を終えて、陸上夏季競技大会に全18人の3年生のうち14人が出場した。

 以前はバスケットボール部やテニス部を経験した仲松は、本人いわく「遅刻や授業中のおしゃべりなど生活態度が悪かった」ことに加え、持ち前のスピードや筋力を買われ、経験者の玉城建郎教諭の誘いで昨年11月に練習を始めた。2メートル50から始めて4メートル30の県中学新を狙うまでに力を伸ばす。「成長して(生活態度も)劇的に良くなった。陸上を通して人生が大きく変わったのでは」。3年担任で陸上部顧問の比嘉共樹教諭(43)は振り返る。

 神奈川県から小5で名護市に引っ越した花田は末の弟を除くと、北山高1年の姉を筆頭に中1と小5の妹、指導してくれる父と家族で研さんする“陸上4姉妹”の一家に育つ。陸上部には昨年まで姉と花田の2人だけだった。今春から6人に増え「みんなで応援してくれるから元気が出ます」。

 部活では中長距離で1人だけ違うメニューを自身で律するつらさもある。試合前日には「世陸(せりく、世界陸上)のアリソン・フェリックスとか好きな選手の映像を見て勝つためのイメージをする」。今大会の2年女子800メートル決勝を制した2分24秒81の記録にも納得せず、16秒台で県中学新を塗り替える九州制覇にめらめらと執念を燃やす。「小さな学校なので団体では歯が立たないが、個人なら戦える。学校生活に負けない姿勢も含め、目が行き届く指導ができるのが強み」と語る比嘉教諭。個性派ぞろいの選手らは、今日もグラウンドで汗を流す。