【島人の目】地中海難民と沖縄基地


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 イタリアには中東やアフリカからの難民・移民が地中海を渡って押し寄せている。今年は7月19日現在、9万3千369人が漂着した。その数は今後も確実に増え続けるとみられている。彼らの救助と救助後の面倒見に翻弄(ほんろう)されているイタリアは、EU(欧州連合)の介入と手助けを必死に呼び掛けている。

 だがEU各国は「イタリアに同情する」「イタリアを一人にはしない」「イタリアの痛みを分かち合う」などと「連帯」を表明するものの、実はほぼ無関心と言ってもよい態度を貫いている。それどころかEUの問題児とも呼ばれるハンガリーのオルバン首相は「イタリアは難民排斥のために全ての港を閉鎖するべき」と非難し、それにはチェコ、スロベニア、ポーランドの元共産主義国で今や難民・移民排斥の急先鋒(せんぽう)となっている国々の代表が同調した。

 難民・移民の「最終目的地」はイタリアではなくヨーロッパ全体である。イタリアにとどまろうと考える者は少数なのだ。つまりそれはEU各国はもちろん欧州全体の「安全保障問題」である。ところが欧州の大半の国と国民は、前述したように、それをイタリアだけの問題とみなして、口先だけの連帯を唱えて無関心でいる。あまつさえ先の4国はイタリアを非難するような声明を出すありさまだ。

 それは沖縄の米軍基地を巡る日本国内の状況にそっくりである。つまり日本全体の安全保障のための米軍基地過重負担にあえぐ沖縄に「同情」「沖縄に寄り添い」「痛みを分かちたい」と口先ばかりの「連帯」を言う多くの日本国民が、欧州の大半の国の国民。イタリアを非難する中東欧4国が、沖縄の反基地闘争は補助金や補償金が目当て、と非難するネトウヨ・ヘイト系の人々によく似ていると思うのである。
(仲宗根雅則 イタリア在、TVディレクター)