台湾の国立台湾大学は4日までに、同大学医学院体質人類学研究室で琉球人の遺骨63体を保管していることを明らかにし、沖縄側に返還する意向を示した。台湾と沖縄の研究者らでつくる中華琉球研究学会(石佳音理事長)の質問に回答した。ただ時期や返還先などは示されていないことから、研究者らは台湾大学への働き掛けを続ける方針だ。遺骨は1928~29年、人類学者の金関丈夫氏(1897~1983)らが今帰仁村の百按司(むむじゃな)墓などから持ち出したものとみられる。
旧帝国大学の研究者らが持ち出し、返還されていない琉球人遺骨は台湾大学だけでなく京都大学にも保管されていることが、研究者の論文や著書などから明らかになっている。しかし、これまで大学当局が遺骨を保管している事実を明らかにしたことはなく、返還の意向を示すのも初めて。
中華琉球研究学会は、「琉球民族遺骨返還研究会」代表の松島泰勝龍谷大教授と連携し、遺骨の返還を台湾大学に働き掛けてきた。松島教授によると中華琉球研究学会は琉球人遺骨と共に、台湾先住民の遺骨も返還するよう要求している。研究者の動きに連動し、台湾先住民タイヤル族出身の高金素梅立法院委員(国会議員)も、台湾政府教育省に対して遺骨返還を求めている。
松島教授は「教育省は国会議員に回答する義務があり、台湾大学も返還の意向を示したと考えられる。近年、アイヌ民族の遺骨返還が進むなど、先住民族の遺骨返還が欧米諸国をはじめとして世界的な潮流になっていることも背景にあるのだろう。ただ実際に返還されるかどうかは不明確で、引き続き働き掛ける必要がある」と話した。
両団体は今後も連携して旧帝国大学に琉球人、台湾先住民の遺骨返還を求める方針だ。8月中に京都大学に対し、台湾先住民の遺骨保管状況を質問し、返還を求める。(宮城隆尋)
英文へ→National Taiwan University announces intention to return 63 Ryukyuan remains excavated from Nakajin