ウルトラマンで知られる沖縄県出身の脚本家金城哲夫さんがプロデュースし、フィルムが行方不明になっている幻のテレビドラマ「沖縄物語」(1963年)の脚本や、配役の情報収集に使ったとみられるスクラップブックなどがこのほど、沖縄映画史研究者の世良利和さんによって発見された。金城さんと共同でプロデュースした東京の脚本家・灘千造(なだせんぞう)さんの遺族が保管していた。
「沖縄物語」は琉球警察が活躍する刑事ドラマ。本土のテレビ局に売り込むため、3話分が試験的に撮影された。だが企画はテレビ局に採用されず、撮影した3話の放送も確認されていない。世良さんは以前に「沖縄物語」の脚本を入手し同人誌「金城哲夫研究」で紹介したが、今回見つかった物は修正が入っており、より実際に撮影されたものに近いとみられる。
スクラップブックは沖縄の役者ら約130人の顔写真とプロフィルが3冊にまとめられている。世良さんは「灘さんがちゃんと情報を集めて沖縄を理解しようとしていた様子がうかがえる」と指摘する。
資料は昨年、世良さんが灘さんの遺族から預かった。そのうち脚本は、第1話の修正入り脚本と灘さんによる第3話の自筆原稿がある。第1話は東映の脚本家森田新(しん)さんが書いた。世良さんが以前入手した第1話の脚本では犯人が沖縄らしくない名字だったが、今回見つかった脚本では沖縄らしい名字に直されている。
スクラップブックは実際に出演した高安六郎さん、親泊元清さん、小島伸太郎さんらのほか、玉城盛義さんら琉球芸能の大御所や、あまり写真が残っていないと思われる役者の写真も収録されている。灘さん本人ではなく沖縄の協力者が作成したとみられる。似た筆跡で沖縄テレビ放送の便せんに書かれた各劇団の役者名簿も見つかった。
世良さんは「『沖縄物語』は沖縄の役者が沖縄を舞台に演じた作品を全国レベルで通用させようとした先駆けだった。調査を続けてフィルムを発見したい」としている。