環境汚染を防ぐため、沖縄県が実施してきた米軍施設・区域内の下水処理場などの排水の水質調査が2014年度以降、行われていないことが、環境団体「インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)」(河村雅美代表)の調査で分かった。
県環境保全課は「環境省を通じて『日米合同委員会の下部組織の環境分科委員会で、14年度の立ち入り調査が却下された』という報告を受けた」と明らかにした。
県によると調査は県が環境省から委託を受け、1980年度から行われてきた。米軍施設・区域内の下水処理場などの排水を採取し、成分を分析する。最後に行われた13年度は、八つの米軍施設、16地点で採水し、大腸菌や重金属、農薬などが対象項目となっていた。
県は調査ができなくなった理由について「環境省からは『日米間の調整の結果で答えられない』として明確な説明はなかった」としている。しかし、14年度以降も県は毎年、環境省に米軍施設内の排水調査の計画案を提出し調査を求めている。担当者は「米軍基地内の環境を継続的に調査し、実態を把握することは重要だ」と話している。
環境省は取材に対し、再開が認められない理由を明らかにせず「14年に調査方法が変わり、まずは周辺の河川の水質調査を行うことになった。もし基準値を超えた汚染があり、基地由来だとはっきりすれば、日米合同委員会で基地内での調査を検討していくことになる」としている。
県外の米軍基地も同様に、基地内の水質調査ができなくなっている。
IPPの河村代表は「県は基地内の調査ができなくなってもその事実を公表してこなかった」と批判した。その上で「政府は日米地位協定の環境補足協定の締結を強調するが、それは欺瞞(ぎまん)的な負担軽減だ。結局、日米地位協定では米軍の裁量権を逸脱できないという限界を再認識させた」と述べ、住民の利益につながるような形での取り組みが必要だと訴えた。
また、県環境影響評価審査会会長の宮城邦治沖縄国際大名誉教授は、立ち入り調査の制限は「県民に不安をもたらすだけでなく、環境汚染問題の未然防止という調査本来の目的を果たさない」と指摘し、政府は調査再開に向け、米軍と交渉すべきとの見解を示した。