【読谷】読谷村波平の聖地「東門(あがりじょう)」に、台風で倒木し一時は致命的な傷を負いながらも、地域の人に大事に育てられ、回復しているガジュマルがある。1964年に当時の読谷中3年生30人が植えた木で、共に50年以上の歴史を歩んできた地域の「心のよりどころ」だ。現在もまだ傷は残っているが、地域の人は「早く回復し、もっと大きくなってほしい」と願っている。
傷ついたガジュマルは、64年当時、読谷中で教員をしていた喜友名行雄さん(81)の庭にあった木で、生徒30人がかりで運んだものだ。どんどん大きくなり大きな木陰を作っていった。
しかし、2011年の台風で根こそぎ倒れてしまった。これを見た住民たちは、自分たちの家の片付けもままならぬうちから集まり木を立て直した。枝や葉の部分を切り落とし、小さくなってしまったが、何とか持ちこたえることができた。
その後順調に回復したように見えたが、一部で腐敗が進んでしまい、昨年さらに腐った部分を伐採した。現在は、ガジュマルの周りを木で囲い、倒れないように支えており、新しい葉も生え始めている。
喜友名さんは「大切にしていたので倒れた時は本当にショックだった」と振り返る。「だが若い人たちが『このままにしちゃいけない』と集まり、心強く思った」と話す。
木を植えた1人、上原清輝さん(68)は「ちょうど東京オリンピックの頃に植えた木で、ずっと一緒だった。幼い時から青年会活動も、結婚式の余興も見守ってきてくれた。心のよりどころだ」と語る。
東門は、十五夜遊びや観月会の舞台となる集落の「遊(あし)び庭(なー)」だ。回復を続けるガジュマルのほか、沖縄戦の艦砲射撃をくぐり抜けた戦前からのガジュマルも含め現在、5本のガジュマルが植えられている。2002年には県の「沖縄の名木百選」にも選ばれた。
東門の目の前に住む知花幸勇さん(68)は「盆踊りにエイサーに、いつもガジュマルと一緒だった。この木は自分たちの自慢だ」と胸を張り、これからも大切に育てていくことを誓った。(清水柚里)