【島人の目】王者メッシの悲嘆


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 先日、世界最高峰のサッカー選手、リオネル・メッシの結婚式があり、260人の金持ち有名人が招待された。メッシは招待客に「祝儀はいらない。その分のお金を全て慈善団体に寄付してほしい」と頼んだ。ところが披露宴が終わってみると、合計で“たった”の約125万円(1人頭4800円)が寄付されているだけだった。

 125万円の寄付金は、普通なら少なくない額、と言えるかもしれない。だがそこに集まったのは、前述のように世界中の大金持ちのセレブたちだ。その金額は、慈善行為が奨励され大切にされる欧米社会の感覚では、醜聞と形容してもかまわないほどに少ない数字なのだ。招待されたセレブのうち、ほんの一部の資産状況を見ればそれは明らかである。

 例えばメッシが所属するFCバルセロナの同僚、スアレスは年棒が手取りで約21億円。元同僚の名選手、プヨルは資産が約52億円。同じく元同僚、ネイマールの年棒は税込みで約60億円。歌手のシャキーラの資産が約262億円。また彼女の夫でメッシの同僚のピケの年棒は約8億円などなど。

 彼らのうちの何人かでも、メッシの要望に応えてそれぞれの「立場に見合った」寄付をしていれば、その総額は大きく増えていたに違いない。だが結果は、先述のごとくなんとも惨めな恥ずかしい内容だった。

 統計によると、慈善活動をする世界の人々のうちのもっとも裕福な20%の層は、収入の1~3%に当たる額を毎年寄付に回す。一方、もっとも貧しい20%の人々は、彼らの収入の2~3%を寄付に回すとされる。金持ちは貧乏人よりもケチなのだ。メッシの披露宴に集まった金持ちたちが、慈善寄付に冷たかったのも仕方のないことかもしれない。が、いずれにしても、極めて寂しい話ではないだろうか。
(仲宗根雅則 イタリア在、TVディレクター)