アリが口移しで情報伝達 アブラムシは蜜から提供 琉大・林研究員らグループ


この記事を書いた人 大森 茂夫

 異なる生物同士が互いに利益を与え合う「相利共生」の代表例であるアリとアブラムシだが、働きアリは、どのアブラムシが共生相手かを、蜜を口移しにする際に仲間に伝えていることが分かった。琉球大学農学部の林正幸研究員らのグループが突き止めた。アリが共生相手の情報を仲間に伝達している証拠としては世界で初。日本時間の30日に英国王立協会紀要にオンライン掲載された。

 アリは巣の近くにいるアブラムシを利用するが、アブラムシには蜜を提供しない種がいるほか、出現する種は季節によっても変わる。今回の研究対象になったトビイロシワアリでは、数千から数万匹もが同じ巣で暮らすため、アブラムシから蜜をもらったことがある働きアリが仲間にその情報を伝えれば、集団として効率的に動くことができる。

 林研究員らのこれまでの研究で、トビイロシワアリとマメアブラムシを実験皿に同居させると、アブラムシと触れ合ったことのないアリはアブラムシに高い攻撃性を示すが、蜜をもらったことのあるアリは攻撃性を低下させることが分かっている。今回、アブラムシ経験のあるアリと同居させたアリは、自身に経験がないにもかかわらずアブラムシへの攻撃性を低下させた。だがアリ同士の口移しを実験的に阻害するとアブラムシへの攻撃性が増加した。口移しの際に、アブラムシの種に特有の匂い情報が伝えられている可能性がある。