8月に北海道で実施された日米共同訓練「ノーザン・ヴァイパー」に参加した在沖米海兵隊部隊の車両が5日、那覇軍港に降ろされ、その中に自走式の高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」6台が確認された。従来在沖米海兵隊が持っていた155ミリ榴弾(りゅうだん)砲よりも強力な火器が沖縄に装備され在沖米海兵隊の機能が強化されていることになり、専門家は海兵隊の任務拡大の可能性も指摘している。
HIMARSは最大6発のロケット弾を搭載でき、射程距離は六十数キロに及ぶ。従来の多連装ミサイルシステムのMLRSを軽量化したもので、MLRSの無限軌道からタイヤ仕様に変わり、輸送機C130にも搭載可能だ。過去には米空軍嘉手納基地のMC130特殊作戦機に積み込む作業も確認されている。イラクでの戦闘でも使われた。
日米共同訓練「ノーザン・ヴァイパー」には米軍普天間飛行場の海兵隊輸送機MV22オスプレイも参加した。自衛隊の発表文では、海兵隊の参加部隊名は第三海兵師団の第12海兵連隊(砲兵)で、装備品として155ミリ榴弾砲のほかHIMARSも列挙している。
在日米軍の動向を監視する市民団体「リムピース」の頼和太郎編集長は「海岸部だけではなく、もっと深い所を支配していこうという意図があるのかもしれない。海兵隊の戦略的位置付けが変わることを表している可能性もあり、沖縄にいる海兵隊もそれに組み込まれているのかもしれない」と推測した。
県内の米軍基地を監視する県平和委員会の大久保康裕事務局長は「海兵隊の地上部隊ではこれまで155ミリ榴弾砲が主力だったが、それを上回るものが少なくとも1年以上前から配備されていたことになる。空軍や自衛隊との連携もあり、軍種や国を選ばず機動能力を高めている実態がある」と指摘した。
HIMARSは、沖縄から米軍車両などを運搬した民間チャーター船「はくおう」(1万7400トン)が5日に那覇軍港に降ろした。
(滝本匠)