臨時国会で衆院解散 沖縄県内選挙区 現職、立候補に意欲


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 安倍晋三首相が28日招集の臨時国会の早い段階で衆院を解散し、10月中の総選挙を検討する意向を与党幹部に伝えていたことから、10月中に衆院選が実施されることが濃厚になった。県選出・県関係の衆院議員9人のうち8人は出馬の意欲を示しており、県内小選挙区での当選に向けて立候補の準備を進める。2014年12月の前回衆院選以来、2年10カ月ぶりに県民の審判が下されることになりそうだ。

【1区】赤嶺、国場、下地氏 当選経験3氏が激突

 1区は共産の赤嶺政賢氏(69)と自民の国場幸之助氏(44)、維新の下地幹郎氏(56)の現職3人で事実上、1議席を争う構図だ。県内全4選挙区の中でも最激戦区に位置付けられる。前回2014年選挙は「オール沖縄」勢力の支援を受けた赤嶺氏が選挙区で勝利し、国場と下地の両氏は比例で復活当選した。

 16年の県議選、参院選では「オール沖縄」勢力の獲得票が多かったが、17年7月に投開票された那覇市議選では同勢力保守系の象徴ともいえる会派「新風会」候補者の落選が相次いだ。

 赤嶺、国場、下地の3氏ともこれまでに1区で当選した経験を持つ。有権者の9割以上が那覇市に集中しており、那覇市の情勢で勝敗が決する公算が大きい。都市化し、無党派層の多い那覇市の有権者をどう取り込めるかが焦点になる。

 幸福実現党新人の下地玲子氏(59)も出馬を予定する。

【2区】照屋、宮崎氏 生活、基地対応争点に

 2区は社民の照屋寛徳氏(72)と自民の宮崎政久氏(52)の現職2人の一騎打ちとなる公算が大きい。米軍普天間飛行場や米空軍嘉手納基地など基地所在市町村が多く、暮らしの向上に向けた政策と合わせて基地問題への対応も争点となりそうだ。

 照屋氏は2003年の総選挙以来、議席を死守してきており、全国的には党勢低迷が続く社民内でも沖縄2区は重要視されている。過去2回の衆院選では2区を構成する8市町村全てで最多得票を獲得していて、安定感を発揮している。

 宮崎氏は前々回、前回と照屋氏の後じんを拝していて、比例での復活当選が続く。一方、宜野湾、浦添両市の直近の首長選では宮崎氏が支援した現職がともに当選を果たしており、革新地盤とされる2区での浸透、切り崩しを進めている。

【3区】玉城、比嘉氏 1勝1敗、激戦予想

 3区は自由の玉城デニー氏(57)と自民の比嘉奈津美氏(58)の現職2人を軸に、議席を争うことになりそうだ。2人は3区の議席を巡り、これまでお互いに1勝1敗の戦績で、今回の総選挙でも激戦を繰り広げることが予想される。

 2012年は自民県連初の衆院選女性候補として臨んだ比嘉氏が初当選した。14年は辺野古移設に反対する「オール沖縄」の勢いを背に、玉城氏が当選した。

 3区は名護市や東村、国頭村などを選挙区に抱える。前回選挙以降、名護市辺野古では新基地建設に伴う護岸工事が始まり、北部訓練場では新たなヘリパッド建設と過半の返還があった。政府の動向に対し、有権者がどう判断を下すか、注目される。

 幸福実現党新人の金城竜郎氏(53)も立候補を予定している。

【4区】仲里氏は保留 西銘氏出馬へ

 4区は、前回2014年に当選した無所属の仲里利信氏(80)が高齢などを理由に進退について保留しており、出馬するか不透明な状況だ。現職で自民の西銘恒三郎氏(63)は立候補する予定だ。

 前回は「オール沖縄」勢力が擁立した無所属の統一候補として仲里氏が西銘氏を下した。西銘氏は比例で復活を果たした。

 本島南部や先島地区を擁する4区は自衛隊配備問題や尖閣諸島問題への対応のほか、サトウキビなど1次産業が盛んなことから環太平洋連携協定(TPP)への対応も争点になりそうだ。

 仲里氏は質問趣意書を数多く提出して政府見解を引き出しているほか、「全国行脚報告会」を行い、全国で沖縄問題を訴える活動を続けている。

 4期目の西銘氏は総務副大臣や経産副大臣、自民党総務部会長、衆院国土交通委員長などの要職を務め、政府や党内で存在感を発揮している。

 幸福実現党新人の富川泰全氏(38)も立候補を予定している。

[九州比例]1減で沖縄にも影響

 今回の衆院選から九州比例の定数が1減し、20議席となる。「1票の格差」是正に向けて小選挙区と比例代表の議席を計「0増10減」する改正公選法が7月に施行されたためだ。比例で当選した現職議員が多い沖縄にも一定程度、影響が出そうだ。

 改正公選法では小選挙区定数が青森と岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県で各1減した。比例代表では東北と北関東、近畿、九州の4ブロックの定数がそれぞれ1減された。戦後最少の計465議席となる。

 現在、県選出・県関係衆院議員は9人。うち4人は小選挙区の当選者で、残り5人は小選挙区で破れたものの比例で復活当選を果たしていて、半数以上が比例復活組となっている。九州比例の議席が1減したことから、比例当選の枠争いは前回よりさらに激しさを増すことになる。