国の〝面目〟つぶれても「遺憾」のみ 嘉手納パラシュート降下訓練で見えること


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MC130特殊作戦機からパラシュートで次々と降下する兵士=21日午前7時29分、米軍嘉手納基地(新里圭蔵撮影)

 日本政府が米空軍嘉手納基地でのパラシュート降下訓練に懸念を示した8月の日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)からわずか1カ月。米軍は21日早朝、降下訓練を強行した。2プラス2で日本側が取り上げていただけに、地元では訓練の中止へのかすかな期待もあった。しかしそれはあっさりと裏切られた。米側の訓練強行で日本側のメンツがつぶれた格好だが、日本政府は「遺憾」との表現に終始するのみ。そこからは沖縄県民と同じ温度での怒りや憤りは見えてこない。

 「あり得ない。なぜ大臣が2プラス2で取り上げたにもかかわらず、訓練を止めることができないのか」。県幹部の一人は訓練強行に怒りを隠さなかった。

視界の外

 「フェーズ(段階)は今までとは全く違う」(県幹部)。訓練予定が通知された15日、県幹部は従来よりも強い姿勢で中止要請をする必要があると判断した。

 嘉手納での降下訓練は4月、5月にも実施された。しかし、今回は2プラス2の後。県にはこれまでと状況は明らかに変わっているとの認識がある。

 県は訓練強行に対し、従来通りの対応では米側にも日本政府にも県民の憤りは伝わらないと判断し、15日に訓練予定の通知があった時点で従来よりも強い態度で臨んだ。

 これまでは課長レベルだった事前の中止要請を知事公室長に引き上げた。しかし結果から見れば米側にその意図は伝わらなかったことになる。

 「米軍の視界にはSACO最終合意は入っていないようだ」。翁長雄志知事もこう断じ、米側への不信をあらわにした。

むなしさ

 「このような形で訓練が行われたのは遺憾に思う」。訓練確認後の小野寺五典防衛相は記者団にこう答えた。今後も伊江島補助飛行場での実施を求めていく考えを示したものの、表情は硬くこわばっていた。

 政府は8月の2プラス2でパラシュート降下訓練を議題に載せたことを“成果”と強調してきた。だが実際は地元の懸念を伝えただけ。米側から明確な回答は引き出しておらず、その後も、訓練制限に向け具体的に協議する様子はない。

 「日本政府が当事者として責任を持ち米側に(中止を)働き掛けてほしい」。県は抗議文に思いを込めた。ここ数カ月、県はオスプレイの飛行を含め、あらゆる場面で米軍の「運用」を追認していく日本政府に不信を募らせ、「当事者」を口にすることが増えている。「本当はこんな言葉を言わせないでほしい」。ある県幹部はこの言葉を使うむなしさを吐露した。

 「もう日米の力関係なのかな。日本が弱いよね。でも自分たちは言い続けないといけない。恒常化したら怖いから」。嘉手納基地を抱える市町村の幹部の一人はこうつぶやいた。

 「大臣が直接相手にぶつかっても事態が変わらなかったことを、大臣としてむなしさを感じ、真剣に思いを深めてほしい」。翁長知事はこう指摘した。(仲井間郁江、仲村良太)