『対話 沖縄の戦後』 「オール沖縄」軸に絡む議論


社会
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『対話 沖縄の戦後』河野康子・平良好利編 吉田書店・2592円

 本書は、その書名が示すように、沖縄在住の4人の証言者と3人の分析者を囲んだ対話の記録である。

 本書の魅力は、「座談形式であったこともあり、ざっくばらんに自身の経験や考えなどを話した」(編者の平良好利)ところにある。一読し、証言者が語る秘話や政治の舞台裏に引き込まれ、また新しい研究成果は刺激的であった。

 第一部の儀間文彰、仲本安一、比嘉幹郎、照屋義実など政治家、経済人との対話は、沖縄の保守とは何かと探り出そうとする企画であり意欲的である。第二部の鳥山淳、黒柳保則、我部政男ら研究者との対話は、沖縄戦後史を考える最新の知見が語られる。

 7人との対話はそれぞれ独立しているが、通して読むと、オール沖縄を軸にかみ合ってくる議論がある。

 仲本は、「保守とか革新とかは本質ではない、問題は使命感があるか」とし、「知事選に元自民党の翁長が立候補しそれに共産党も社会党ものっかる」ことに肯定的評価をする。

 比嘉は、「権力者との対立という視点が沖縄の政治を理解する上で重要、その視点に立つと『オール沖縄』もおかしくない」と述べる。この比嘉の指摘は、民主党(後の自民党)の立法院議員であった儀間が「任命主席と民主党総裁の利害が相反する場合は、どっちの立場に立つか(住民の側に立つべき)」という主張と軌を一にする。

 「権力(国)に対峙(たいじ)する沖縄」として、オール沖縄が語られているが、研究者の視点はさらに内部に向かう。鳥山は言う、「オール沖縄になることを許さないような圧力がいつも何らかの形で加わっている」。我部は、「多数派はすぐ壊れるんじゃないか。一つにまとまることは思想的には弱くもろい」と喝破する。

 さらに聞き手の雨宮は、「『本土か沖縄か』という議論の立て方自体が自明なのか、沖縄も都道府県の1県であり、横に連帯を考える方がリアリティがある」と問題を提起する。

 私的には、編者の河野康子が「問われるべきは、沖縄の戦後は未だに終わっていないことの意味」だ、と結論的に述べていることに注目したい。(仲地博・沖縄大学学長)

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 こうの・やすこ 法政大学名誉教授。外務省「日本外交文書」編纂委員。たいら・よしとし 獨協大学地域総合研究所特任助手、法政大学非常勤講師。

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