―県はじめ周辺自治体が反対する中、今回もパラ訓練が強行された。受け止めを。
翁長雄志知事「これまでも副知事含め経緯の説明があったともうが、私の方からも。4、5月に嘉手納基地で降下訓練が行われ7月7日に嘉手納町、沖縄市、北谷町という首長と一緒に外務、防衛の両大臣にこういうことがないようにと。それから8月17日の2プラス2(日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会)でこの問題を取り上げてしっかりやってもらいたいという話をした。その中では嘉手納町長などは嘉手納飛行場の司令官の交代式などもこれまでずっと参加していたようですが今回は参加しないとのことを両大臣にも伝えてその憤りを伝えた。
そうする中で9月11日に日米地位協定の見直し要請をする中で小野寺防衛大臣と話をする中で、8月17日に2プラス2の中でマティス国防長官と話をしたかた尋ねるとやりましたと。そういうものはぜひとも順守してもらいたいという話をしたら、マティス長官からは沖縄返還の1972年頃沖縄にたびたび行ったことがあり、当時はパラシュート降下訓練の事故で少女が被害者になったことなど沖縄の実情をよくご存じだったと、小野寺大臣から聞いた。ああ、そうですか、それはそういうマティス長官の思いを東京の司令官にも沖縄の司令官にも伝えてもらいたいですねなどというような話をした。長官の周辺には部下など米軍幹部もいたということで、一応マティス長官からのお話もあったと思うのですが、残念ながら期待をしていたけれども、このように実施されたことについては憤慨に堪えない。ここまでやってもダメかという感じがする。
そして理由を沖縄大使などから聞くと、伊江島の管理をする人たちがいなかったので嘉手納になったとの話をされていたと。5日前に21日に嘉手納を使用するとの連絡が入ったわけですから6日前から嘉手納でやることは分かっていたわけで、そこに担当の職員がいなかった、からという理由は、私からすると例外的な理由にはなりませんし、こんなことでやられたらこれはもうSACO(日米特別行動委員会)最終合意はほとんど視野の中に入ってない。もう使いたい放題というようなことになるのではないかなあと思っています。
3連協の皆さんと行った(上京した)時にも申し上げたが「良き隣人」というわけにはこういう形ではなりませんよと。嘉手納飛行場、または日米安保まで影響を与えますよというような話もさせてもらった。こういったものがなかなか前に進まないものは大変残念に思った。
明日から富川副知事が上京して防衛省、駐日米国大使館。外務省に行く。副知事が行くので政務官以上の政治家にあってほしいと要望しています」
―富川副知事の上京は緊急の設定かと。緊急に決まったいきさつを。
謝花喜一郎知事公室長「今回の訓練強行を受け、県としても政府にしっかり当事者意識をもって取り組んでほしいという思いがあります。沖縄でも要請するがそれを再度、富川副知事に上京いただき日本政府にも要請する必要があると判断し急きょ飛んでもらうことにした」
―2プラス2でも話題になった。政府が国として訓練をやめるように言っているにも関わらず訓練が強行された。なぜこういうことが起きる、政府がひとつの訓練でさえ止めることができないと思うか。そして止めることができない日本政府について知事はどう思うか。
翁長知事「いきつくところは日米地位協定、日米合同委員会でそこで色々決められることそのものが、ある意味で米国優位の地位協定ですから。その意味から言うと、小野寺大臣(小野寺五典防衛相)が2プラス2で話をしてマティス長官も理解を示してくれたよと、ある意味で私に期待を持たせるような形で話をしたものが、全然、何のあれもなかったと。ある意味では今の日米安保体制、日米地位協定の中では日本にはある意味で当事者能力が欠けていると。それなくして日本国民、県民の生命、財産を守ることは難しいのではないかということをよくよく理解していただかないと沖縄の基地の問題をどんなに話しても理解してくれませんので。こういったものひとつひとつ自分で大臣がぶつかってそれでもどうにも世の中が変わらなかったということからしますと、そこに大臣としてむなしさをかんじて日本国というのはどうなのかといいことまで真剣に深く思いを深めてもらいたい」
―米軍はリリースを発表し、嘉手納が使用されたのは「わずか3回に過ぎない」との表現をしている。この点についてどう思うか。
翁長知事「今の内容、初めて聞くが、『三回しか』とか、こういうものはこれまでもそうだが、運用という意味でできるだけ夜の10時以降は飛びませんとかも『できるだけ』。こういいったことがすべての合同委員会の中でくっついてきますので、そういう意味では何でもできるというような事だと思う。
しかし3回しかできなかったと言っているのであれば、この長い間それで済んだんですからね。基本的にSACO最終合意で伊江島で実施することになっていますから、なぜ今年に限って3回も連続して。1度は天候不順で中止になりましたそれを含めると4回になる。恒常的に使うという風にしか見えない。そうなるとこれまでの信頼関係はどうなるのかを含めて、70%の基地を受けている知事としても、そして多分三連協の首長も皆そのように思っているんじゃないかなと思う」
―米軍はこれまで嘉手納で実施する場合は例外の理由として天候を理由に挙げることが多かった。しかし今回は人員の問題を理由にしているのが新しい感じがするが、この変化についてどう思う。
翁長知事「4月5月の場合でも天候不良で伊江島ではできないので嘉手納で実施したという話があるが、伊江島に問い合わせをしたところ大変その日は天気も良く海も荒れていないとのことだった。そういう中で天候不要と言っているようであります。
そうすると今回のものも伊江島に、あそこは海兵隊管理だが、職員というか担当の人がいなかったことを理由にする。それはその6日前にあり、時間は6日間あったわけですからその間にやりようはあったと思う。天候不順や担当者がいないことが理由になるのであれば嘉手納はまさしくいつでも使えると。こんなものでいつでも使えるのであればSACO最終合意は全く視野に入っていないと思いますし、かつ今回の件は私からすると、日本政府も私たちと同じ気持ちで例外にはあたらないとか、稲田(朋美)元防衛大臣もそのように話しをして、こんにちまできていますし。
そういう意味では政府自体も残念無念と言っている中でのこういう状況、環境の中で行われているわですから、やはり日米地位協定のあり方はしっかり考えないと、日本の主体性や国民・県民の生命、財産を守るということについての何の努力も及ばないというところに大変残念な思いをしています」
―政府は3連協の要請を受けて以降は、訓練中止を求めてきた。そういう意味ではこれまでの日本政府の従来の対応よりは強めに出た印象もあるが、結果的には訓練が強行されたことをみると、知事としてこの間の日本政府の米側への態度は十分なものだったとお考えか。物足りないか。
翁長知事「気持ちとしては過去におけるものよりは防衛省も割合、意志を明確にしてダメですよと言ったと思う。しかし根本的にはそれを規定する日米地位協定や日米合同委員会で話し合われるもののすべてが日本政府に当事者能力なしというものが、こんにちまで明らかになってきていますので。ただただ基地負担軽減と言われても沖縄県民からすると理解できない。今回は力を入れたかもしれませんが、その結果は跳ね返されてしまった意味では、努力はしたが結果において何ら変わらなかったという印象を受けます」
―パラシュート降下訓練について県外の人々と県民との間で危険性に対して認識の違いがある気がする。これまでの歴史や経緯などを明日副知事が伝えるかが重要だと思うは、副知事は明日どういうメッセージを伝えるのか。
翁長知事「富川副知事はその辺りの認識はしっかりしていますので、今おっしゃった内容はほぼそのような形で伝わっていくと思います。しかしこんにちまでも何百回にも渡って伝えてきてますので。何も1、2年に一回だけ伝えているわけではなく、私だけでもなく市長村長も各政党代表などいろんな代表が伝えに行っても米軍に伝えたいと思いますという形でこんにちまできている。そうすると、県外の人が理解できていないのではという問題は、嘉手納の問題に限らず環境の問題や騒音の問題などもいかように伝えようもなかなか伝わらない。
今はネットが旺盛でありますから、そういったところで誤った情報がどんどんどんどん流されていく。私も多くの人から県外で沖縄の現状を訴えなさいと言われ、私なりにやっているつもりだが、300人の集会を50くらいこなしても15000人しか聞かない。そういう状況の中で沖縄の実態をどのように伝えていくかは、こうして会見しながら皆さま方が書いて、どちらからというのはどちらでも良いですから、こういうことが起きたんだということを書いていただくことが県外の方も関心を持っていただくことになるかと思います」
―安室奈美恵さんが引退表明した。那覇市も栄誉賞を授与した。あらためて受け止めを。
翁長知事「私は世代的には違うので、大変とにかく沖縄からあのような素晴らしい歌手が出たということは大変、最初に出た頃から本人に対して敬意を表しながらこれから以降も伸びてほしいなと思っていました。那覇市長時代に那覇マラソンで一緒に鐘をついたことがある。こういったことなどを含めて大変、安室奈美恵さんには注目していましたし、2、3日前の演奏会というか、こういったもので大変フィーバーしたと。これは今でもすばらしいけれども、これからも中核を担っていくんだなぁと思っていたら、昨日の引退と。
その前には宮里藍さんが。彼女も那覇マラソンで一緒に鐘を突いたんですけども。引退ということで。何か、鮮やかで素晴らしいなと思うのと同時に寂しいというのと、何とか良い形で今までの蓄積を生かしていただきたいなあという思いと両方複雑ですね。本当に寂しいという意味では寂しいですよね」
―県民栄誉賞の規定に『広く県民に敬愛され、県民に明るい希望と活力を与える顕著な功績― があったものに対して』とある。県として引退の節目に県民栄誉賞を授与するお考えは。
翁長知事「はっはっ(笑)。すぐ即答したら重みがないと思いますので。でも今おっしゃるような意味合いは相当の県民がどうなのかなあと思っていると思いますので、色々考えてみたいと思います」
―前向きに。
翁長知事「それは即答では言わない方がね。いずれ分かることではあると思いますのでね。はい」(おわり)