【名護】児童文学作家の上條さなえさんを招いた講演会「愛を伝える読書 子育ては失敗の連続」(主催・絵本屋Polaris、後援・琉球新報社など)が22日、沖縄県の名護市民会館で開かれた。上條さんは、幼い頃にホームレス生活を余儀なくされたことや、出会った多くの人々の優しさに支えられた経験を語り、子育て中の母親らに向けて「夫を愛して、家庭を築いてください。シングルになった人は今よりも幸せになってください」と、家庭の大切さを伝えた。
講演会は名護市教育の日の関連事業で、会場には約250人が訪れた。
上條さんは10歳の時、両親が離婚、父親とホームレス生活を余儀なくされ、学校で教育を受けられず、食事もままならない状態だった。その後、離れて暮らしていた姉の計らいで児童養護施設に入った。
その頃、“山下先生”と出会った。山下先生は周りの児童が弁当を持っている中、パンを二つしか持っていなかった上條さんに「そのパンが食べたかった。交換してくれないか」と声を掛け、パンと弁当を交換してくれたという。
上條さんは「先生の弁当は1年ぶりの家庭の味だった」と振り返る。山下先生との触れ合いの中で、上條さんは「山下先生のような先生になる」という希望を持つようになった。
その後、母親と生活するようになり、大学卒業後は小学校の教員や埼玉県教育委員会委員長など務め、3年前に夫と沖縄に移住した。
講演で上條さんは、沖縄戦にも触れた上で「皆さんが笑顔でいられるのも、悲惨な沖縄戦を生き抜いた先祖のおかげ。私は今後も(執筆活動などを通して)沖縄のことを伝えていきたい。それが戦闘機の音一つ聞かないで育ってきた私の償いです」と話した。