『沖縄謀叛』 日本の閉鎖性救う鍵に


社会
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『沖縄謀叛』大田昌秀、鳩山友紀夫、木村朗、松島泰勝編 かもがわ出版・2160円

 本書の「謀叛(むほん)(謀反)」は気になるタイトルである。当初は「4人は共謀罪か?」のようなタイトルを付けようと思っていたそうだ。謀反の響きは、大きな犯罪で悪のようなイメージがあるかもしれない。しかし、決して悪とは限らない。辞書では「時の為政者に反逆すること」とあり、むしろ沖縄の現状にピッタリであろう。為政者が違法で不条理な行為を行ったとすれば、謀反こそ、正しい側だからである。

 本書出版の50日前に亡くなられた大田昌秀元沖縄県知事の最後のメッセージも切々と述べられている。大田氏は鉄血勤皇隊として沖縄戦を体験され、沖縄戦研究、平和研究に力を注がれた。また、沖縄県知事として、「平和の礎」や新沖縄平和記念資料館を建設したことでも知られている。さらに、1995年の代理署名拒否は、裁判にまで発展し、日本政府に対して、戦後半世紀を経た沖縄の米軍基地過重負担を全国に訴えた。まさに良い意味での「謀反」であった。

 本書の編著者は、大田氏の他、鳩山友紀夫(由紀夫)元総理大臣、木村朗氏、松島泰勝氏である。鳩山氏は普天間基地の「最低でも県外」移設を訴えた総理であり、東アジア共同体構想の提唱者でもある。本書の中でも東アジア共同体の重要性を説いている。

 木村氏は政治学の教授で、平和学もフィールドにしている。松島氏は経済学教授であるが、沖縄独立論の主提唱者である。

 本書はこれら編著者の各主張が展開されているが、読んでいくと、4人の主張内容が深くリンクしているのが分かる。そのことは「構造的沖縄差別」の起源としての琉球処分や沖縄戦をめぐる議論から始まり、差別に対する本土メディアや司法の姿勢を問題ありとする。それが現在の普天間問題、辺野古問題に絡んでいるのである。むしろ、この流れから琉球独立論や東アジア共同体の将来像を示す考え方に至るのは自然ともいえる。

 沖縄のこのような活用こそが日本の閉鎖性を救い、発展させる鍵ともいえそうな展開に読者もわくわくするであろう。

 (高良鉄美・琉球大学法科大学院教授)

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 おおた・まさひで 元県知事、元琉球大学社会学部教授。

 はとやま・ゆきお 元衆院議員で元首相。由紀夫を友紀夫に改名した。

 まつしま・やすかつ 龍谷大学教授。

 きむら・あきら 鹿児島大学教授。

 

沖縄謀反
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