無料低額診療6年半で1.4万人 医療生協、困窮者対象


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 生活困窮者に対して沖縄医療生活協同組合が県内6医療機関で実施する無料低額診療事業(無低診)の利用者が、2010年10月の事業開始から6年半で延べ1万4千人を超えた。その大半が生活保護基準を下回る収入の世帯だった。利用者は11年度をピークに減少傾向にあり、沖縄医療生協は「制度を知らない人も多く、利用者は氷山の一角にすぎない」と指摘する。

 沖縄医療生協は10年10月15日から沖縄協同病院、那覇民主診療所、首里協同クリニック(以上、那覇市)、中部協同病院(沖縄市)、糸満協同診療所(糸満市)、浦添協同クリニック(浦添市)で無低診を始めた。世帯収入が生活保護基準額を下回れば無料に、130%以下の人は窓口負担を半額免除している。

 入院と外来を合わせて1066人だった2010年度以降、16年度末まで毎年延べ1500人以上が利用した。その9割以上が生活保護基準を下回る収入で、国民健康保険の保険料が払えず「無保険」状態となった人もいた。

 利用者の半数以上を占める沖縄協同病院の外間貞明事務長によると、利用者は40代以上が多く、家族などに頼れる人がいないという。無低診は「一時的な措置」との位置付けで、その間に生活保護などの利用を勧めている。

 利用者は、行政や民生委員の紹介で無低診につながることが多いという。ただ、受診時に末期がんで、手遅れとなった人が昨年は3人いた。外間事務長は「もっと早く受診していれば助かったかもしれない」と悔やむ。沖縄県民主医療機関連合会(沖縄民医連)の名嘉共道事務局長も「低賃金で働いて病院にかかれない」「重症化するまで我慢している」といった事例が増えていると指摘する。

 無低診では医療費が減免されるものの、薬代は対象外だ。那覇市は16年度から、無低診の利用者を対象に薬代の補助を始めた。名嘉事務局長は「薬局に寄らずに帰る人がほとんどいなくなった」と言う。沖縄民医連などは沖縄市にも薬代の補助を要請している。

 一方で利用者は減少傾向にある。外間事務長は「無低診を必要としている人や、生活保護を受けられるのに受けていない人はまだまだいる。受診抑制を防ぐことで救える命がある」と話している。