泡盛文化保護の認識を 世界遺産登録へシンポ 那覇 識者「琉球料理の定義必要」


この記事を書いた人 大森 茂夫
琉球料理や泡盛の世界遺産登録へ向け、県民の機運醸成などを指摘する登壇者=9日、那覇市の県立博物館・美術館

 黒麹(こうじ)菌を用いた泡盛や琉球料理を「琉球泡盛文化圏」として世界無形文化遺産への登録を目指す世界遺産登録推進委員会は9日、那覇市の県立博物館・美術館でシンポジウムを開いた。登壇者らは、琉球料理や泡盛を守るべき文化として認識し、機運を盛り上げる必要があるとの認識で一致した。黒麹菌の特異性や琉球料理の持つ優位性について専門家による基調講演のほか、パネルディスカッションがあった。

 基調講演で、小泉武夫東京農業大学名誉教授は「強いクエン酸が生じる黒麹のおかげで、泡盛を年中造ることができる。沖縄だけが黒麹を育成できる特異な場所だが、世間では(焼酎に使う)鹿児島のイメージが強い」と現状を指摘。「その優位性は保護すべき遺産として、県民から認識していかないといけない」と説いた。

 西大八重子西大学院学院長は、豆腐や昆布を全国で一番多く消費し、食塩の摂取量は全国で一番少ないなど「薬食同源」として長寿と健康をつくりあげてきた琉球料理の特長を力説した。長寿県復活のためにも「学校給食から沖縄伝統の食文化に触れる機会をつくらないといけない」と語り、伝統食の給食提供など琉大と進める「チャンプルースタディ」の取り組みを紹介した。

 パネルディスカッションでは、沖縄ユネスコ協会の久保田照子副会長はユネスコ(国連教育科学文化機関)加盟国がここ数年で増えているため応募数も増えたとして「日本食が遺産登録されたときより数十倍も難しくなっている」と指摘した。その上で「(登録条件である)県民の強い関心が不可欠だ。守るべき文化という共通認識が高まらないといけない」と強調した。

 日本酒造組合中央会の篠原成行会長も「全国でも、麹を使った国酒(日本酒、焼酎)の取り扱いが飲料全体のうち13%と落ち込んでいる。酒を含めた日本食文化の衰退が顕著だ」と警鐘を鳴らした。

 麹菌の製造販売を行う石川種麹店の渡嘉敷みどり代表者は「需要が落ちていることで、黒麹菌の製造を抑えざるを得ない」と泡盛出荷量の落ち込みを憂いた。

 料理研究家の松本嘉代子氏は琉球料理を作る担い手がいない現状を説明。琉球王朝時代から受け継がれてきた琉球料理と、ポークを使ったチャンプルーなど沖縄料理の区別がされていないことを指摘し「琉球料理の定義や担い手育成などすべきことは多い」と指摘した。

 フリーアナウンサーの菊地志乃さんは「琉球料理と沖縄料理の違いを学び、正確な情報を伝えていきたい」と応えた。