米ジュゴン訴訟原告団、独自で県内調査へ 「国防総省の隠蔽監視」


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 名護市辺野古での新基地建設が国指定の天然記念物ジュゴンに影響を与えるとして、日米の市民や自然保護団体が米国防総省に工事の中止を求めた米ジュゴン訴訟の原告団が、県や地元住民、科学者ら利害関係者を対象に、環境への影響など聞き取り調査を独自で行うことが29日、分かった。原告で来沖中の自然保護団体・米生物多様性センター(CBD)のピーター・ガルビンさん(53)が本紙取材に明かにした。

辺野古新基地建設の阻止に向け、富川盛武副知事(左端)に協働を呼び掛けるピーター・ガルビンさん(右から2人目)ら=29日午前、県庁

 米国防総省は米連邦地裁での差し戻し審理に伴い今後、米国家歴史保存法(NHPA)に基づき、利害関係者に聞き取り調査を行う。原告団は同様の調査を行うことで、国防総省が新基地が及ぼす環境への影響を十分に調査しているのかなどを確認する狙いがある。

 NHPAでは、文化財保護の観点から事業者が利害関係者との十分な協議や、事業が環境や周辺住民の生活などに与える影響について調査することが義務付けられている。同法は海外の文化財にも適用される。国防総省は2014年までに実施した利害関係者への聞き取り調査や協議を基に、「工事がジュゴンに与える影響はない」と結論付けた。しかし、ジュゴン訴訟では実際は十分な聞き取り調査をしていなかったことが明らかになっている。

 ガルビンさんは「われわれが同時進行で協議することで、国防総省がこれ以上、真実を隠蔽(いんぺい)できないよう監視したい」と強調した。

 国防総省が再度実施する利害関係者への聞き取り調査や協議は、ジュゴン訴訟最大の争点となる。原告団は、2カ月以内にNHPAに精通する学者や科学者などからの意見も参考に利害関係者を選定するほか日本側の原告団と協力し、県内での聞き取り調査も進める。

 来年5月の差し戻し審理に向け、新基地建設を巡る現状を調査するためにCBDのメンバーや人権弁護士など米国側の原告ら9人が現在来沖している。原告団は29日、県庁で富川盛武副知事と面談し、辺野古新基地建設の阻止に向け連携を強化することを確認した。(当銘千絵)