車いすダンサー、盲目の歌姫、寝たきりの芸人…。卓越した芸を持ちながら「障害者」と特別視され、存分に活動できないエンターテイナーたちが集まり、10日、東京都内で舞台公演を行う。「障害者を見せ物にするな」と批判もある中、「そうした誤解と偏見に一石を投じるためにも、最高の見せ物になろう」と関係者は意気込んでいる。
公演は「誰も排除されない社会」を目指す一般社団法人「Get in touch」(略称Get)の主催。「月夜のからくりハウス」と題し、手話漫才、自閉症の青年のラップ、LGBT(性的少数者)の自作詩朗読、「小人プロレス」など、約25組の妙技が2時間にわたり品川プリンスホテル(東京都港区)の円形劇場で展開する。
車いすダンサーのかんばらけんたさんら実力者の中で、異彩を放つのが身長114センチの「日本で一番小さい手品師」マメ山田さんだ。
1960年代からキャバレーを回り、映画や舞台に進出。業界屈指の個性派俳優だが、テレビ出演は皆無に近い。「視聴者の苦情が怖いテレビ局は、僕みたいな小さいのは出さない。いろんな障害で苦労しながら芸で身を立てている人間がいると世間に知ってほしい」。舞台ではコミカルな動きで客席の笑いを誘う。
那覇市出身の伊是名夏子さんは「小人プロレス」でプロレスラーのマネジャー役を演じる。舞台に立つのは初めてという伊是名さんは「かっこよさや楽しさを目指し、それぞれが自分の個性を生かして彩られる。前代未聞で貴重な舞台に立てることをとても光栄に思う」と声を弾ませる。
公演のヤマ場で登場する「義足の女優・ダンサー」森田かずよさんは、先天的に背骨や脚が変形した自身の体をかたどった人形と“共演”。障害がある人を「障害者」と呼んで社会の片隅に追いやり、見て見ぬふりをする「健常者」の在り方を疑問視し、「私はさらし者になろう」と強烈なせりふを投げ掛ける。
公演を統括するGetの代表は、25年前から少数者への偏見をなくす活動を続ける女優の東ちづるさんだ。障害や病気、国籍など多様な「特性」を持つ人が社会で広く活躍する海外に比べ、日本は少数者の活動を福祉や教育の場に押し込め、「困難克服の物語」として扱う風潮があると指摘する。
チケットは既に完売したが、特設サイトを通じた資金募集(クラウドファンディング、25日まで)に応じると、公演のDVDなど返礼品が手に入る。問い合わせはGet事務局、電話070(5467)0936。