米、「抗議・要請」拒む 保育園 米軍部品落下 県民との溝、深まる


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 「恐怖を覚えたと同時にまたかという思いだ」。米軍ヘリによるとみられる部品落下事故を受け、8日、日本政府に飛行自粛を求めた富川盛武副知事。県庁に呼び出した外務省の川田司沖縄担当大使、中嶋浩一郎沖縄防衛局長を前に、13年前に自身が勤めた沖縄国際大学で起きた米軍ヘリ墜落事故に触れ、度重なる事件事故への恐怖を語った。

保育園への米軍からと思われる部品落下を受け、川田司沖縄担当大使(左から2人目)と中嶋浩一郎防衛局長(同3人目)へ抗議する富川盛武副知事=8日午後、県庁

 1965年に読谷村では訓練でつり下げられたトレーラーが落下し11歳の女児が圧死した。2015年には、普天飛行場所属のAH1攻撃ヘリがミサイル発射装置など計200キロの部品を落下させた。県民の中には、歴史の中で幾度となく発生している落下事故の記憶が、新たな事故により再び呼び起こされるという状況が続いている。

■5年も待てない

 県は8日、CH53ヘリ等の飛行自粛に加え「緊急措置的な危険性除去策」を新たに求めた。これまで、普天間飛行場の危険除去策として5年以内の運用停止を求めてきたが、今回の事故を受け「5年以内」を待っていられないと判断。飛行停止のほか県外での訓練実施など「県内上空を米軍機が飛ばない状況をつくってほしい」(県幹部)との思いからだ。

 しかし日々、普天間飛行場の危険と隣り合わせで暮らす市民からは翁長知事の動きに物足りなさを漏らす声も出る。知事を支える「オール沖縄」の立場をとるある宜野湾市議は知事が現場を訪れていないことに不満を募らせる。「事故発生当日、県議会を止めてでも来るべきだ。現場を見ることで『だからこそ辺野古に新基地を造らせない』という主張も強まるのだが」とこぼした。

■否定的見解

 米軍は8日、落下物と飛行ヘリの因果関係には否定的な見解を示し、事故原因も判明していない。富川副知事は8日午後、米軍キャンプ瑞慶覧を訪れ、事故の捜査状況について米側から説明を受けたが、当初「要請」として飛行自粛を求めようとしていた県側に対し、米側が「原因が判明しない中での抗議や要請は受けられない。状況説明なら応じられる」として県の面談要望に応じた。米軍は、落下物自体がCH53ヘリに使用されている部品であることは認めている。米側の早急な説明なくしては、県民との溝は深まるばかりだ。(仲井間郁江、明真南斗)