『坂手洋二戯曲集「星の息子/推進派」』 現在(いま)を生きる人々の物語


社会
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『坂手洋二戯曲集「星の息子/推進派」』彩流社・2376円

○シリーズで第1期全14作品が収められる【坂手洋二戯曲集】の刊行が始まったね。

●1冊に2作品収録。第一回配本は2冊同時刊行。

○『バートルビーズ/たった一人の戦争』『星の息子/推進派』の4作品とも沖縄では上演に接する機会はなかった。

●演劇って贅沢といえば贅沢な「場」だよね。

○今回の戯曲集は、作者自身が書き下ろした「解説・作品ノート」が収められ、初演時の舞台美術や写真が読者の「脳内劇場」での上演を助けるね。

●戯曲の扉ページ右側に初演時のチラシ、左の扉には黒のグラデーションの天空にタイトルが浮かぶ。これから芝居が始まる感がわくわく(笑)。

○戯曲と「解説・作品ノート」を往復しながら、戯曲および上演がどのように同時代と格闘し創造されたかを想像できる悦楽もある。

●坂手さんの戯曲は、丁寧な取材に裏打ちされた演劇としての社会批判力がすごいね。

○そうだね。それでいて社会的事象にさほど関心がない人でも、読者はそれぞれの切り口から劇世界へ入ることができる。演劇なんだから、いろんな人が描かれているし現実ではありえない飛躍もある。

●「星の息子」は、高江に材をとっているけど、三・一一(さんてんいちいち)の被災地や官邸前、普天間と時空を結んでいる。「推進派」は、島チャビの中、島興しを考え批判対象になる島人が主人公だが、震災被災者たちの移住問題も絡む。

○『星の息子/推進派』は、坂手洋二が沖縄や徳之島に向き合いながら描いた三・一一後の現在(いま)を生きる人々の物語なんだね。

●遠く離れ直接的には関係なさそうな事象が、戯曲の中の人々の移動と遭遇、行動により深いところで切り結ばれていく。そこに演劇ならではの現在が立ち上がる。これも旅する戯作者・坂手洋二のなせる技だね。

○上演に立ち会うことでしか知ることのできなかった作品世界の書籍化の意義は大きいね。

(宮城康博・劇作家)

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 さかて・ようじ 1962年、岡山県生まれ。劇作家、演出家。慶応大学国文科卒。83年に燐光群を旗揚げした。作品に「トーキョー裁判」「カムアウト」など。紀伊國屋演劇賞、読売演劇大賞最優秀演出家賞など受賞。

 

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