【島人の目】先住民の日


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 アメリカ・インディアンである夫の友人は、毎年10月第2月曜日の「コロンブス・デー」になると抗議活動をしていると言う。その彼から贈られた「500 NATIONS」という本には、アメリカ大陸先住民の歴史や各部族の伝統文化、芸術、風習などが美しい挿絵と共に紹介されている。ヨーロッパから白人らが来るまでは、豊かな文化の中で独自の精神世界を育み、平和な日々を送っていた。この本には、先住民が白人の民族浄化政策によって大量虐殺されたことにも触れている。彼らがたどった過酷な歴史には胸が痛み、残虐な白人には憤りを感じさせられる1冊だ。

 アメリカ大陸の先住民は、最初のヨーロッパからの開拓者が飢えなどの苦難にある時、食料を分け与え救いの手を差し伸べた。バージニアでは白人を友好的に受け入れ、トウモロコシやタバコ栽培を教えた。彼らは共存を模索したが、間もなくして白人は、土地争奪戦を始め、先住民のすべてを破壊していく。先住民の目からみるとなぜ、後から来た白人に土地を奪われ、窃盗、女性暴行、殺りくが繰り広げられたのか憤りと怒りの極致であろう。戦後沖縄の土地を銃剣とブルドーザーで奪い、家を焼き払った米軍の横暴さをほうふつさせ、その野心のみの不当な開拓魂はあの頃から変わらず現在でも続いていると思ってしまう。

 コロンブスは今では奴隷商人、そして虐殺者であったと認識されているのに、なぜ「コロンブスデー」として米国の祝日になっているのかが不思議だ。コロンブスデーを祝うことは、先住民に対しての残忍な暴力による征服を容認することになる。コロンブスを英雄視する白人視点のこの祝日が抹消され、アメリカ・インディアンが主張する「先住民の日」に変更し、彼らの崇高な精神的伝統や文化を称賛する日であってほしいと願う。
(鈴木多美子、バージニア通信員)