犬猫の殺処分、大幅減少 沖縄、官民連携で譲渡増える


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
沖縄県動物愛護管理センターから譲り受けた姉妹犬のティン(右)、カーラ(左)と喜舎場郁子さん=沖縄県うるま市具志川

 沖縄県内の犬猫の殺処分数がここ数年、大幅に減少している。県によると、保健所に収容された犬猫殺処分数は、2012年度は6604匹だったが2016年度には1532匹まで減少。収容数に占める殺処分数の割合も85%から51%に改善した。2016年度は、収容された犬のうち、約4割が新たな飼い主に譲渡された。殺処分減少の要因の一つに、ボランティアの活動による飼い主の意識向上や、行政との連携した譲渡が増えていることがある。

 うるま市具志川の喜舎場郁子さん(66)の家では、17年9月、県動物愛護管理センターから国頭村で保護された野良犬の姉妹、2匹を譲渡してもらった。2匹合わせて「天の川」となるように、それぞれ「ティン(天)」と「カーラ(川)」と名付け、家族のように愛情を込め育てている。

 しつけは主に、娘の梢さんが担当する。現在8カ月の2匹は性格も優しく、すっかりすむ所にも慣れ、くつろぎモード。しかし当初は、捕獲された時のショックで狭い所を怖がり、餌をあげると“がつがつ”と急いで食べた。そんな2匹の特徴に合わせ、梢さんは工夫しながらしつけを行ってきた。

 喜舎場さん一家は、捨て犬を代々、飼い続けてきた。これまで飼った犬は、けがや病気で治療代もかかった。それでも常に「最後まで飼う」。それが飼い主の責任だと考えてきた。番犬として犬を飼っていた喜舎場さんが、家族のように思うきっかけになったのが、19年間、一緒に過ごしたゴールデンレトリバーの雑種、柚(ゆず)だった。

 最初の出会いは譲渡会。柚は体がちょっと大きくて、耳がただれ、ほかの犬にいじめられておびえていた。飼うつもりがなかったが見るに見かね、連れて帰った。初めて家の中で飼い、柚がいると家族の会話も弾んだ。穏やかで優しく、家族のそばにはいつも柚がいた。しかし2年前の12月、あまり苦しむことなく逝った。

 一家の集まる居間には、柚の遺骨が保管され、写真が飾られている。「2年間は他の犬を飼えなかった」という今も特別の存在だ。その下では、ティンとカーラが気持ちよさそうに仲良く寝そべり、ひなたぼっこをしていた。

 犬の売り手側も捨て犬を減らすための試みに力を入れている。ペットショップのペットボックスなどを運営するオム・ファム那覇店の子犬販売担当の高安麻里さんは商談の際、あえて病気になった場合の治療費や手入れの手間など「デメリットを説明することが大切」と話す。

 店では、飼い主として適性があるかも確認し、高安さんは、「かわいいから飼いたい」という高齢者には、息子や娘の許可を得ているのか確認する。代わりに面倒を見る人がいない場合、売らないこともあったという。

 オム・ファムでは「飼い主の責任や命の大切さを伝え、殺処分を減らすのもペットショップの責任」と考えている。店内には募金箱を置き、動物愛護団体に寄付したり、週に1度、店舗の一角を提供し、譲渡会も開く。

 一方、猫については問題は山積みだ。県の動物愛護管理センターによると、高齢化社会の影響もあり、高齢者が猫に餌をあげ、知らないうちに増えてしまうケースが多いという。「あいまいな飼い方をせず、飼うならきちんと首輪を着け、避妊去勢してほしい」と強く勧めた。(中村万里子)