多彩な演目が繰り広げられるステージで、ベテランが精彩を放っている。豊見城市の豊崎タウン特設会場で開催している木下大サーカス沖縄公演で、石垣市出身のパフォーマー下地和也さん(40)は1人で3役をこなす。花形の空中ブランコや、古典芸「一丁ばしご」、オートバイショーに出演する。下地さんしかできない演目もあり、公演になくてはならない存在だ。
「フライヤー、石垣市出身、下地和也」。12月29日の沖縄公演で、空中ブランコの終盤に場内アナウンスが流れた。指笛が鳴り、拍手がひときわ大きくなる。「恥ずかしいけど、会場が沸いてくれるのはうれしい」と下地さんが頬を緩めた。
名古屋市で仕事を探していた10代のときに木下大サーカスを観覧し、心を奪われた。公演後すぐに「入りたい」と電話をかけ、翌日に面接。その1週間後に働き始めた。
もともとは運動が苦手で、中学時代は化学部。入団直後は懸垂3回が限界だった。それでもステージに立ちたいと、公演後に毎日2~3時間の練習を重ねた。チケットもぎりから始め、約1年後に空中ブランコデビューを果たした。「仲間がいたので、練習は苦ではなかった」と振り返る。
横になって両足ではしごを支え、そのはしごを女性演者が上っていく「一丁ばしご」。はしごを支える「ゲソ」は、我慢強さが求められるため習得が難しく、現役団員でできるのは下地さんだけ。入団当初から下地さんを知る中園栄一郎さん(45)は「自分の役割をこつこつとこなすタイプ」と評する。
沖縄公演の出演は4回目。5日には、5年半ぶりに古典芸「葛(くず)の葉」を演じる。下地さんは「一回一回の公演を大切に演じている。頑張っている県出身者がいるというのを、沖縄の人に見てほしい」と、照れくさそうに笑った。
(前森智香子)